原発再稼働へ「政治判断」
迫られるエネルギー政策の大転換[どうなる電力]

再稼働が注目される関西電力大飯原発(右から)3号機、4号機=福井県おおい町で11年11月17日

 広範囲に長期にわたる甚大な被害をもたらした東京電力福島第1原発事故は、日本のエネルギー政策の大転換を迫った。政府は原発依存からの脱却の必要性を一般の国民と共有し、エネルギー基本計画の抜本的な見直しの議論が進めている。しかし稼働原発ゼロの事態が現実化し、当面の電力需要をいかに賄うかという難題が立ちはだかる。

 このままでは夏場の電力供給不足に陥るおそれもあり、野田佳彦政権は安全が確認された原発を再稼働させる「政治判断」へかじを切った。原発に頼らざるを得ない構造をいかに変えていくか。国民の安全と経済の維持をにらみながらの中長期的なエネルギー政策の在り方の議論は、国の将来像に直結する。

関電大飯原発3、4号機「問題なし」
原子力安全委が了承

 東電福島第1原発の事故で、地元の各自治体から原発に対する不信感が高まり、定期点検後の運転が再開できない状況が続いている。東電柏崎刈羽原発6号機(新潟県)が3月26日に定期検査に入ったため、現在全国で54基の原発を持つ我が国で稼働中の原発は、北海道電力の泊原発3号機の1基だけとなった。それも5月5日には停止する予定だ。

 東日本大震災が発生するまで、原発は電力需要の3割を担ってきた。政府は今年夏が10年並みの猛暑なら、沖縄を除く9電力で9・2%の供給不足となり、昨夏並みの暑さでも関西電力など4社で供給不足に陥るとみている。

 このため野田政権は、内閣府の原子力安全委員会(班目春樹委員長)が3月23日にストレステスト(安全評価)の1次評価を「問題ない」として了承した関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について、「政治判断」で再稼働の方針を決定し、4月中に地元の了解を取り付けて早期の再稼働に道筋をつけたい考えだ。しかし政府の思惑通り、地元の理解が得られ原発が再稼働できるかは極めて不透明な情勢だ。

再稼働へ「政治判断」する野田佳彦首相

 関電は昨年秋、定期検査で停止中の大飯原発3、4号機について、想定される地震の1・8倍の揺れと想定される4倍の高さ(11・4m)の津波まで安全性の余裕が確保されているというストレステストの結果を、経済産業省原子力安全・保安院に提出。保安院は2月13日にこの結果の妥当性を確認しお墨付きを与えていた。

 原子力安全委は外部の専門家も交じえた検討会を計5回開き、保安院の審査内容を検討し、安全評価の1次評価について問題ないとの確認結果を決定した。原発の定期検査後に再稼働するための条件と位置付けられているストレステストの1次評価については、関電大飯原発3、4号機以外では8事業者が14基の評価結果を保安院に提出済みだが、安全委が了承したのは大飯3、4号機が初めてだ。

 政府はこの安全委の決定を受け、野田首相と藤村修官房長官、枝野幸男経済産業相、細野豪志原発事故担当相の4者が安全性を確認し、政府が再稼働の責任を負う形を明確にし、地元説明に入る。4月上旬にも枝野経産相が福井県やおおい町を訪問し、安全性と再稼働への理解を求めることにしている。地元の理解が得られれば再び首相と関係3閣僚が集まり、再稼働を最終的に政治判断する手順となっている。

 原発の再稼働に政府が前向きとなっていることについて、経済界では「電力が安定供給されなければ産業、とりわけ製造業に大きな影響が及ぶ」(米倉弘昌経団連会長)として歓迎している。経済同友会が3月にまとめた調査でも、会員の経営者が政府に求める政策のトップに挙げたのが「原発の再稼働を含む電力安定供給」で48・6%に達していた。中期的な「縮原発」を唱える長谷川閑史代表幹事も「短期的には安全を確認できた原発の再稼働を国が責任を負う形で進める必要がある」と述べている。

 しかし、大飯原発の地元・福井県の西川一誠知事は「ストレステストだけでは再稼働の判断には不十分」と国に福島原発の事故の知見を反映した安全基準を示すよう求めているほか、隣接の滋賀県の嘉田由紀子知事も「現時点で結論を出すのは時期尚早」とのスタンス。関電の筆頭株主である大阪市の橋下徹市長も「いろいろな情勢があって判断がつかない」と述べており、地元の了解が容易に得られる状況にはなっていない。

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