リコール要件引き下げへ改正法案
有権者80万人超分は8分の1の署名で[地方自治]

 地方自治への住民参加の促進や首長と議会による「二元代表制」の活性化に向けた地方自治法改正案が通常国会に提出された。有権者80万以上の都市でリコール要件を引き下げるなどの改革が盛り込まれたが、当初目玉とされた拘束的住民投票の導入が見送られるなど、全体的に迫力を欠く内容となった。

 改正案では首長の解職や地方議会解散のリコール(直接請求)に必要な署名数が緩和された。

 これまで有権者40万人までは3分の1、それを超える人数について6分の1の署名が必要とされた。改正案は80万人を超える分の必要な署名数は8分の1に引き下げた。名古屋市議会のリコールをめぐり、必要な署名数のハードルの高さが指摘されたことを踏まえたものだ。ちなみに都構想で注目される大阪市(有権者約210万人)を例に取ると現在約42万人必要な署名ラインが改正後は約36万5000人に下がる。

 また、首長、議会関係では首長の権限抑制に比重をかけた。首長が議会の議決を経ずに行う専決処分の対象から副知事、副市町村長選任を除外した。条例や予算の専決処分を議会が不承認とした場合、首長に対して必要と認める措置を講じ議会に報告するよう求めた。

 議長らによる臨時議会の招集要求に首長が応じない場合は、議長による招集権も認められた。一連の規定は鹿児島県阿久根市で前市長による議会無視の市政運営が混乱を来した「教訓」を踏まえたものである。

 地方議会の運営に関しては定例、臨時会の区分を設けず通年会期とし、その場合は条例で定例日を定めることを制度化した。これまでも運営上可能だったが住民の議会参加、傍聴を活発にする狙いなどから法律で裏付けた。毎月第2水曜日に午後6時から議会を開くような運営の仕方が想定されている。

 総務省が強く主導したのが国による違法確認訴訟制度だ。自治体の事務処理が法令に違反すると国が判断し是正要求にも応じない場合、国が高裁に違法確認を求め提訴できるようにする。

 現行法では自治体が国の是正要求を黙殺してしまうと国はそれ以上、手の打ちようがなかった。住基ネット不接続自治体への対処が念頭にあることは言うまでもない。

 今改正案の淵源は「地方政府基本法」構想にさかのぼる。民主党政権は一般法に上位する地方自治の基本法制定を目標とし、総務省の地方行財政検討会議で議論してきた。その結果、二元代表制の拡充などで早期に措置できる事項を地方自治法改正として対処する方針が固まった。

 その作業に住民参加のカラーを強く打ち出そうとしたのが片山善博前総務相だ。首長と地方議会による代表民主制の緊張感を高め、補完する狙いから直接民主制的な要素を盛り込むことを改正案の柱に据えようとした。

拘束力ある住民投票は先送り

 その目玉と位置づけられたのが、テーマを限定した住民投票について法的な拘束力を持たせる制度だった。これまで住民投票は憲法の定める特別法の制定やリコールなど特別なケースを除き、拘束力が認められて来なかっただけに、大きな政策転換だ。大規模な公共施設(ハコ物)について住民投票で賛否を問い、結果に拘束力を持たせる新制度導入を総務省は目指した。

 住民の直接請求もリコールに必要な署名数の緩和だけでなく、条例の制定・改廃請求の対象に地方税を加えることも図られた。1948年の自治法改正以来、地方税と手数料は直接請求の対象から除外されており、その復活を目指したのだ。これらの内容が盛られた総務省案は昨年2月、地方側に示された。

 ところが地方6団体の「片山色」に対する抵抗は想像以上だった。「住民投票に拘束力を持たせると代表民主制を変質させる」などの懸念が示され、全国知事会は「拙速な法改正に反対」との姿勢を表明。直接請求の対象に地方税を含めることにも住民側から減税要求が乱発されかねないとの懸念が強く出され、法制化は暗礁に乗り上げた。

 結局、東日本大震災による作業中断を経て昨年夏に発足した第30次地方制度調査会が拘束的住民投票と地方税への直接請求を今改正の対象外とする意見をまとめ、政府は両条項の見送りを決めた。

 普段は国に分権改革をしきりと求める地方側が足元で住民参加が加速しそうになると門扉を閉ざした印象は否めない。分権の受け皿として自治体にどこまで内部改革の気概があるのか、自治法改正のてんまつが投げかけた課題は重い。

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