2012.04.21(Sat) 毎日フォーラム

苦悩の色濃くするコメ栽培農家
全袋検査条件に作付け、収穫後に混乱も[福島]

筆者プロフィール&コラム概要
多くの自治体関係者が集まって開かれたコメ作付けに関する農林水産省と福島県の説明会=福島市で2月29日

 東京電力福島第1原発事故の影響に苦しむ福島県のコメ農家が、更に苦悩の色を深めている。食品に含まれる放射性セシウムの基準値が今年4月から改められ、コメなど一般食品で従来の「1kg当たり500ベクレル以下」から「100ベクレル以下」に引き下げられたためだ。農林水産省は昨年産米で100ベクレルを超えた地域でも、収穫したコメの全袋検査などを条件に作付けを認め、500ベクレル以下の地域の大半でコメが生産されるが、収穫後の混乱も予想される。

 放射性セシウムの基準値は食品衛生法に基づいて決められ、それを上回った食品は出荷できなくなる。昨年、原発事故発生を受けて厚生労働省が設定した「暫定規制値」では、穀物や野菜、肉や魚などが1kg当たり500ベクレル、牛乳・乳製品と飲料水が200ベクレルだった。4月からの新基準値では穀物、野菜、肉、魚などの「一般食品」が100ベクレル、牛乳は50ベクレル、飲料水は10ベクレル、乳児用食品は50ベクレルと大幅に引き下げられる。専門家や生産者側からは「厳し過ぎる」との批判も出たが、厚労省は「国民の安心確保のため」と押し切った。

 コメと牛肉は9月末、大豆は12月末まで暫定値を適用する経過措置も設けられたが、消費者心理に猶予期間はない。「4月以前でも100ベクレル超のものに消費者は手を出さない」(筒井信隆副農相)のが実情だ。大手スーパーのイオンが昨年11月に「放射性物質ゼロを目指す」と宣言するなど、流通業界も神経質になっている。

 こうした状況を考慮し、農水省も当初は100ベクレル超のコメが出た地域全体に作付け制限を課す考えだった。しかし、地元市町村から「農家の生産意欲が失われ、地域の将来に禍根を残す」との危機感が噴出。条件付きで作付けを認めざるを得なくなった。

 昨年、同省は「土壌中の放射性セシウムが1kg当たり5000ベクレルを超えた田んぼ」に作付け制限を行った。過去の研究データから、稲が土壌から放射性セシウムを吸い上げる率(移行係数)の目安を0・1と設定したためだ。言い換えれば、土壌に含まれる量が10なら稲に吸収されるのは1。当時の暫定規制値は「1キロ当たり500ベクレル以下」だったから、土壌ではその10倍の5000ベクレルが上限となったわけだ。

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