[プロ野球]
広島・中谷翼「不死鳥のごとく」

アイランドリーグ出身NPB選手は今 Vol.6

予期せぬ大ケガ

 まさに悪夢としか言いようのない出来事だった。

 2年前の9月、甲子園の阪神戦でプロ初スタメンを勝ち取った中谷は最終回にプロ初ヒットとなる2塁打を右中間へ放った。初打点のおまけがつき、ようやく1軍選手として羽ばたくかと思われた。ところが――。それから2日後の広島での練習中、アクシデントが起こる。ショートのポジションでノックを受け、1塁へスローイングをした瞬間だった。

 ブチッ! 右ひじから、何かが切れるような音が聞こえた。そしてひじから先がどこかへ飛んでいったような感覚になった。
「それまではサードでノックを受けていて、いい感じでスローイングができていたんです。まったく前触れがなかったのでビックリしました」

 次に襲ってきたのは激痛だ。何が何だか分からないまま、痛みに耐えてノックを続けたが、3球目でファーストに投げられなくなった。すぐに病院へ直行。診断の結果は右ひじ内側側副靭帯損傷。全治8カ月の重傷だった。リハビリも含めれば、翌シーズンを棒に振ることが確実となり、1軍はおろか、支配下登録からも抹消された。

 育成選手として再契約できたとはいえ、手術後、肩までギブスを装着した自らの姿に「日常生活にも支障が出ているのに、これでまた野球ができるのかな」と弱気になった。ギブスを外すと、ひじの可動域はわずかに数センチ。それ以上に動かすと痛みが走る。

「リハビリをスタートした時が、精神的にも一番キツかったですね」

 最初はウォーキングから始めた。歩くと自然に腕はダランと下がる。重力を使ってひじを伸ばすのだ。バッティングも通常のバットは持てない。軽い木の棒を振るしかなかった。そんな気の遠くなるような作業を日々続けた結果、ひじは徐々に回復。手術から半年を経過した頃には、ようやく硬球を投げられるようになった。