野球
二宮清純「イップスと戦う指揮官」

 近鉄、北海道日本ハムで9年間の監督経験がある梨田昌孝さんから、過日、面白い話を聞きました。梨田さんによれば、「監督にもイップスがある」というのです。

 周知のようにイップスとはゴルフ用語で、精神的な影響などで満足なパッティングができないことを指します。一種の運動障害と考えていいでしょう。

 今では野球界でもこの言葉はすっかり定着した観があります。「あの内野手はイップスにかかってまともに放れない」などという使われ方をします。イップスが原因で内野から外野にコンバートされた選手もたくさんいます。

采配にもイップスが!?

監督として2度のリーグ優勝を誇る梨田

 選手はわかるとして、なぜ監督がイップスに……。私が怪訝な顔をしていると、梨田さんは、こんなエピソードを紹介してくれました。

「走塁死や盗塁死でイニングが終わることがあるでしょう。これが一番、監督にはこたえるんです。近鉄時代にはこれもあって20数試合、盗塁のサインを出せなかったことがあるくらいです」

 現役時代、キャッチャーだった梨田さんは、2死から足を使われるのが嫌だったそうです。2死一塁が2死二塁になれば、ワンヒットで1点取られるわけですから、キャッチャーにとっては気が気じゃありません。