使用済み核燃料の再処理を巡る議論は不十分。「原子力政策見直し」に肝要な「アメリカの国益とどう向き合うか」という現実
「原子力委員会」HPより

 今後の原子力政策を決定づける原子力政策大綱の見直しについての議論が最終的な局面に向かいつつある。政府は、原子力政策の中でも原子力発電推進の根幹となる核燃料サイクルについては、原子力委員会の下に置いた「原子力発電・核燃料サイクル技術等検討小委員会」で検証の議論を進めてきた。先週28日、第10回の会議が開かれ、核燃料サイクルに対する選択肢の提示が行われた。しかし、この選択肢の提示はまだまだ不十分なものだ。

 「代表シナリオ案」と称されるものは三つ。1.全量再処理、2.再処理・直接処分併存、3.全量直接処分だ。

 一つ目の全量再処理はいうまでもなく、現下(2005年策定)の原子力政策大綱の基本方針となっているすべての使用済み核燃料を再処理するという、従来通りの方針を踏襲するものである。実質的には、福島第一原発事故以前と何ら変わらない。

 二つ目の再処理・直接処分併存は、再処理をしつつも再処理のキャパを超えたものについては中間的に貯蔵をし、高速増殖炉や高速炉の研究は従来通り推し進めるものである。

 三つ目の全量直接処分は、再処理を中止し、最終処分ができるまで使用済燃料などは貯蔵し、直接処分の実用化に向けた研究開発を行うものである。

 しかし結局、この三つの選択肢では国際社会が選択しつつあるWait & See(「留保」)の方策を含まないことになる。私が、議員有志とともに昨年の10月より議論を開始した「原子力バックエンド問題勉強会」の2月7日付の政策提言では、このWait & Seeの思想を踏まえながら、「モラトリアム(猶予=留保))」の概念を強く打ち出したところでもあった。

アメリカ政府からの1通の手紙

 実は、05年の政策大綱ではシナリオは4つ示されており、4つ目にいわゆる「モラトリアム」の考えが示されてきたという事実がある。にもかかわらず、28日段階では落されていたことになる。結局、複数委員からの強い提言により改めて4つ目のシナリオ案も提示されることになったが、政策転換に対する強い抵抗を感じさせた。

 今後、さらなる議論がなされ連休明けには原子力委員会としてのまとめが示されると思われる。こうした再処理に関する国際社会の情勢を少し冷静に見ておきたい。

 今年1月10日、米国議会あてに政府から1通の手紙が出された。Poneman & Tauscher letterと称されるその手紙は、Department of Energy(DOE:エネルギー庁)のPoneman副長官とDepartment of State(DOS:国務省)のTauscher軍備管理・国際安全保障担当国務次官連名によるものである。

 そこには、米議会に対して、他国との原子力協定の交渉における"Enrichment & Reprocessing(ENR) "(「ウラン濃縮と再処理」)については政府としては「ケースバイケース」で行うとの結論を示している。

 米国は、世界最大の核燃料及び原子力技術の供給者であると同時に核不拡散のコントロールを指揮する立場を堅持してきた。こうした米国においては、2009年5月にUAEとの間の原子力協定締結交渉で、一切のENR(「ウラン濃縮及び再処理」)を認めさせなかった。オバマ大統領はこの協約締結に際し「責任ある原子力開発を追求したい地域の他の国のモデルとして機能する可能性を秘めている」と語り、政権は、これを"Gold Standard"と表し米国の原子力政策戦略の「新たな標準」かのごとく胸を張った。

 しかし、実際の政府の交渉は必ずしもこのようなゴールドスタンダードを前面に押し出してきたものではない。件のPoneman & Tauscher letter も1月中旬からのベトナムとの原子力協定交渉における政府のスタンスを議会に理解を求めるとの趣旨で出された。「ケースバイケース」こそ今後の米国の基本的スタンスだと理解すべきである。

 手紙でも示されている通り、原子力産業は米国に数十億ドルに及ぶ市場と多大な雇用をもたらしており、世界的にも競争相手のいない優位な立場を保っている。しかし、一方で原子力ビジネスにおける仏露の台頭など、決して楽観視もできない。原子力産業の発展と一方で安全保障上の核不拡散コントロールというバランスが米国の最も重要な戦略的視点となっているのである。

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