サッカー
二宮寿朗「“逆境”が似合う岡田武史」

“岡ちゃん改革”進行中――。

 一昨年の南アフリカW杯で日本代表を率いた岡田武史は中国スーパーリーグの杭州緑城の監督に就任し、同リーグで初めて指揮を執る日本人監督として中国国内で注目を集めている。

 4日現在、第4節まで終了して1勝1分け2敗で16チーム中13位。昨季8位で終えたチームを若手中心のメンバーに切り替え、意識改革を求めてチームづくりをしている最中でもある。出だしに苦しむのは岡田にとって“想定内”だ。第3節には強豪の北京国安にアウェー戦で勝利するなど粘り強さを徐々に見せつつあり、勝負はこれからと言っていい。

岡田が訴えるメッセージ

 今年2月、チームを引き連れて日本各地をキャンプで巡っていた岡田に話を聞く機会があった。中国人プレーヤーの才能の豊かさ、吸収能力の速さに驚きつつも、プロとしての「自立」が遅れていることに気を揉んでいた。

 鹿児島・指宿キャンプ中には練習試合の最中にもかかわらず、若い選手がベンチ近くで記念撮影に応じるという日本では考えられない“事件”が発生していた。試合前、集中する場であるはずのロッカールームで携帯ゲームに興じる選手もいた。試合でも先制点を許しただけで集中力がなくなってしまうのだ。それでも「選手たちは決して悪気があってやったわけじゃない」と岡田は言う。中国独特の管理社会、一人っ子政策とも無関係ではないだろうが、岡田はそこにメスを入れようとしていた。

「自立させるには“これ、やれよ”って押さえつけるほうが手っ取り早い。でも、それだと上のレベルには絶対にいけない。上で管理しようとするから自立ができなくなる。だからキャンプになると俺は一切、門限なんか設けない。(中国人の)コーチは“何をやらかすか分からないから門限はあったほうがいい”と進言してくるけど、できなければ消えていくだけ。それがプロなんだから。これは時間をかけながら、じっくりと変えていくしかないね」

 管理は真の自立を促さない。

 ユースから10代の選手を大量に引き上げた岡田は、ある時は個人面談で、ある時は全体ミーティングで絶えず選手たちの心に訴えかけようとしていた。
「プロとして今、何をすべきかを考えろ。お前たちに自由を与えるが、その自由の意味を履き違えるんじゃない」と――。

 キャンプ中からその効果は表れ始めていた。全体練習の後、居残りでグラウンドを走る者、ピッチ横で体幹トレーニングに励む者……自らの意思で動こうとする輪は広がりを見せていた。

 やらされる、ではなく、自分から能動的にやる。

 岡田のメッセージは、チームの一人ひとりにしっかりと届いていた。あれから1カ月半。試合の結果には直結していないものの、岡田は「自立」の芽を着実に育んでいるに違いない。