2012.04.11(Wed)

政府の説明不足が目立つ食品のセシウム新基準値――茨城大学高妻孝光教授に聞く

筆者プロフィール&コラム概要

筆者 本郷明美(ライター)

 4月1日から実施された食料品の新基準値には、大きく分けて問題が3つあると思います。

 1つめは、計測の体制ができていないことです。一般食品の新基準値である100ベクレルという、これまでの500ベクレルより低い値を計測するには、対象とする食品の量を増やすこと、計測時間も長くする必要があります。

 また、ある程度の知識と技術が必要です。たとえば、ジュースなどの水ものはガンマ線をよく吸収しますから長時間計測する必要がある、というようなことです。

高妻孝光教授

 ゲルマニウム半導体検出器を使えば正確に測ることができますが、高価な機器ですのでそう簡単には購入できない。計測できる体制が広くできていない状況で、「100ベクレル」という基準が、動き始めます。

 けれども、「100ベクレル未満なら食べていい」という説明はありません。あとの判断は、流通業者や生産者に投げてしまっている状態です。これでは国民は、20ベクレルでも30ベクレルでも、「検出されたらやっぱり身体に悪い、怖い」と考えてしまいます。

 対して、過去に日本政府が見事なリスクマネージメントを行った例があります。

 1950年代、食糧難のため日本はタイから米を輸入していました。その米にカビが発生し、黄色く変色していた「イスランジア黄変米」という事件です。このカビた米をある量食べると肝機能障害を起こす、ということがわかりました。けれどもこのとき政府は、タイからの米の輸入を全面禁止にはしませんでした。

 カビの混入率が何%くらいだったら食べていいですよ、何%だったらこうしなさい、というように細やかに対応したのです。もちろん、これは当時輸入をストップしてしまったら餓死者が出る可能性もある状況だったための策ではあったのでしょうが、対応としてはよかったと思います。

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