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あれは一企業の問題ではない・・・
オリンパス事件をスクープして分かったこと

不正を追及した元社長のウッドフォード氏も会社を追われた〔PHOTO〕gettyimages

内部協力者がいたからこそ

 今回、オリンパスの上場を維持させることで、海外の投資家から日本のマーケットの信頼が大きく損なわれたことは間違いないでしょう。それなのに斉藤 惇・東京証券取引所社長は、上場維持について「間違った判断だとか、意外だったとの声はあまり聞こえていない」とまで言ってのけています。東証の人たちは、オリンパスの内視鏡で頭の中を見てもらったほうがいいのでは、と思わずにはいられません。

 実は私のもとには事前に、上場維持の可否は「賛成3、反対2」で決定するとの情報がもたらされていました。要するに出来レースで決められたものでした。

 さらに、約20年にもわたって1000億円を超える自己資本の水増しを行っていたオリンパスを上場維持にする一方、ホリエモンこと堀江貴文氏が率いたライブドアは、わずか1期だけ経常利益を約50億円水増ししたことによって上場廃止の憂き目を見た。その違いの理由を、東証はきちんと説明していません。

 私はオリンパスの不正が追及される端緒を切り開いた自負はありますが、今回のオリンパス事件が起きた背景、さらに事件発覚後の各所の対応を見ていると、今回の事件の敗者は私かもしれないと感じずにはいられません。事件が浮き彫りにした、様々な悪しき風習を改めようという機運が、どこからもまったく起こらなかったからです。

 同じような事件が、再びどんな企業でも起こりうる---その土壌が、いまも残されているのです。

 山口義正氏。ジャーナリスト。月刊誌『FACTA』上でオリンパス事件をスクープした。このほどその取材過程をあますことなく綴った『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』(講談社)を上梓。オリンパス事件から見えてきた日本社会の病巣について語った。

 オリンパス事件の端緒は不可解なM&Aにありました。投資的にはまったく魅力のない日本企業3社を約700億円という高額で買収し、その後3社はすぐに債務超過に陥っていた。このことを私は『FACTA』(8月号)で「オリンパス 『無謀M&A』巨額損失の怪」としてスクープしました。

 ところが、FACTA発売日の7月20日以降もオリンパスの株は上昇を続けた。多くの証券アナリストたちが、オリンパス株を「買い推奨」していたからです。

 証券会社のアナリストは企業に好意的なレポートを書かないと、企業が公募増資や社債発行する際に引き受けシンジケート団に入れてもらえない。そんな事情があるからでしょう。本来であれば投資家にとって有益な情報を与えなければいけないアナリストレポートが、単なる営業ツールに堕ちているわけです。

 監査法人の問題も浮き彫りになりました。

 今回は、問題を指摘したあずさ監査法人がオリンパスに解任されましたが、その後を引き継いだ新日本監査法人も不正を見抜けませんでした。

 しかし、事件発覚後、監査法人はマスコミなどの取材に「守秘義務がある」の一点張りで、何を間違えたのかという説明責任を果たそうとしません。企業から報酬をもらって監査を行うという関係性でチェック機能が働くのか。そうした問題は何十年も前から指摘されてきたものですが、今回の事件を経てもなにも変わっていないのです。

 オリンパスの損失隠し、粉飾を許した日本独自の商習慣や制度不備はあげればきりがありませんが、特に公益通報者保護法のひどさは目にあまります。公益通報者保護法というのは企業不祥事の内部告発者を保護するための法律ですが、これがまったく形骸化しているのです。

 そもそも私がオリンパス事件のスクープを飛ばすきっかけになったのは、友人の深町(仮名)というオリンパス内部の協力者がいたおかげです。深町からはオリンパスが不可解な買収を進めている証拠となる内部書類を数多く提供してもらいました。

 しかし現在の公益通報者保護法に照らせば、ジャーナリストに内部書類を渡した彼は法的な手順を守らなかったということになってしまう。なぜなら、同法ではまず社内の内部通報窓口へ通報し、それでもだめなら監督官庁へ通報し、さらにだめならマスコミなどへ情報提供するという手順が決められているからです。

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