中国
「復興特需」どころか「チャイナパッシング」まで起きた日本企業「中国移転」の実情
上海モーターショーに、トヨタ自動車の豊田章男社長が突然現れ、内外の自動車業界関係者を驚かせた。〔PHOTO〕gettyimages

 GWの午後の昼下がりの北京首都国際空港。巨大な第3ターミナルの東端に位置するB出口の出迎え口は、東京からのJAL便とANA便が到着するこの時間帯になると、普段とは異質の光景が顕れ、道行く中国人たちの注目を浴びた。それは、背広姿の日本人たちが整列し、税関を通って出てくる日本の本社からの代表団を、平身低頭の体で出迎えるからだ。

「例年は、GWは政治家の訪中ラッシュとなりますが、今年は政界に自粛ムードがあるようで、関西系の政治家の訪問団を除けば少なかったです。代わりに、4月中旬以降、大手企業の社長クラスの訪中ラッシュが続いています。'地震不況'を中国市場でカバーしようという日本企業の傾向が鮮明です」(北京の日本の外交関係者)

上海モーターショーに現れた豊田社長

 4月19日、上海モーターショーに、トヨタ自動車の豊田章男社長が突然現れ、内外の自動車業界関係者を驚かせた。豊田社長は昨年3月にも北京を訪れたが、その時は、世界中に広がったリコール問題に対処するための「お詫び行脚」だった。昨年、自動車販売台数が1800万台! を突破した中国では、年に2回(春は北京と上海で交互開催、年末は広州で開催)、モーターショーを開催していて、すでにデトロイト・モーターショーを凌いで、世界最大規模の自動車イベントに成長している。

 そのため、世界中の自動車業界の幹部たちが、年に2回、中国で顔を揃えるのが「業界の常識」と化しているが、社長就任後2年余りが経つ豊田社長だけは、これまで一度も来ていなかった。

 それが今回、事前予告もなく突然、とびきりの「車模」(モーターショー・コンパニオン)たちを従えて登壇。カメラのフラッシュの放列を前に、笑みを浮かべながら、「トヨタにとって、中国は世界で最も重要な市場です!」と言い切ったのだ。

 実際、4月末に総務省が発表した3月の一般家計の消費支出は、前年同月比でマイナス8・5%となった。トヨタにしても、3月の国内販売台数は、前年同月比でマイナス45・0%減の11万5196台。これは、40年近く前の第1次オイルショック時の水準だ。

 そんな中、今年第1四半期の日本から中国への投資は、前年同期比78・8%増にあたる18億3100万ドルに達した。日本企業は、2008年の金融危機の時もそうだったが、今回はさらに一層、「中国頼み」の傾向が顕著なのだ。

 ところが、中国側は日本発の「特需」に沸いていると思いきや、そうでもない。中国の経済官僚が語る。

「確かにわれわれは、地震が発生した当初、密かに『復興特需』が来ると期待していた。日本の東北地方にあった大工場群が、中国に移転すると思ったのだ。ところがその後の日本企業の動向を追っていると、日立は台湾へ、ニコンはマレーシアへといった具合に、中国大陸とは別の地域に、工場を移転させようとしている企業が多いではないか。特に、最先端技術を誇る日本企業ほど、チャイナ・パッシング(中国通過)の傾向が強いことが判明したのだ」

 この経済官僚の分析によれば、多くの日本企業は、今回の地震を契機として、「二重の移転」を加速させるだろうという。つまり、生産工場の海外移転(特にこれまで日本生産に固執してきた核心技術の生産拠点の移転)と、社内業務のアウトソーシングの加速化だ。そのうち、中国側がノドから手が出るほど欲しい日本企業の最先端技術が、中国大陸ではなく、他のアジア諸国・地域に移転してしまうことに、忸怩たる思いをしているわけである。

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