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ぶち抜き大特集!本当の標的はニッポンだ ふざけんな北朝鮮 金正恩「4・12ミサイル発射」全情報
昨年12月、父・金正日の死によって北朝鮮の新たな指導者となった金正恩。やはり父と同じ道を歩むのだろうか〔PHOTO〕gettyimages

 信用ならない国とその能力 日本は射程距離内。誤って墜ちる可能性がある

 アメリカとの交渉に臨み、「融和姿勢」を見せたかと思いきや、一転「ミサイル発射」を宣言し、その本性を現した金正恩。その不可解な行動の真の狙いはどこにあるのか。ミサイルは日本にも飛んで来るのか。一気に緊迫する東アジア情勢。現状と今後の展開を、徹底リポートする。

「ミサイルの発射確率は、99・9%と見ていい。一度発射を宣言してしまった以上、ここで引いてしまっては『稀代の腰抜け』とみなされ、金正日の後継者とは認められなくなってしまいます。金正恩は自分で、引くに引けない状態をつくってしまった」(韓国・ソウル大学統一平和研究院・張容碩博士)

 ついに金正恩がその本性を現した---。

 去る3月16日、北朝鮮の「朝鮮宇宙空間技術委員会」は地球観測衛星「光明星3号」を運搬ロケット「銀河3号」に搭載し、4月12~16日の間に打ち上げると発表した。

 同委員会はこの打ち上げを「平和的宇宙利用技術を新段階に引き上げる」ためだと強弁しているが、北朝鮮は'09年にも人工衛星打ち上げという名目で弾道ミサイルを発射している。今回も同様に、弾道ミサイルの発射実験であることは論を俟たない。

 北朝鮮は昨年12月17日に金正日総書記が死去して以来、目立った軍事行動を取ってこなかった。ところが、わずか3ヵ月間の「服喪期間」が終わった途端に弾道ミサイル発射を予告してきたのである。

 発射が止められないことが確実な以上、われわれ日本人にとって何より不安なのは、「ミサイルが日本に飛来する可能性があるのかどうか」である。

 北朝鮮は、過去3回にわたって「テポドン」の発射実験を行っている。

 '98年8月に発射されたテポドン1号。1段目は日本海に落下、2段目は日本列島上空を飛び越え、三陸沖の太平洋に落ちた。3段目はさらに飛行し、三陸からさらに遠方の太平洋に落下したと推測された。

 '06年7月の実験では、ノドンやスカッドなど計7発ものミサイルを「乱れ撃ち」し、うち1発が射程6000kmとされるテポドン2号(3段式)だった。だが、このときは発射後1分も経たないうちに空中爆発してしまったため、その性能は判然としない。

有毒物質が撒き散らされる

 記憶に新しいのは、'09年4月のテポドン2号発射実験だろう。この時は日本本土上空を飛行することが予め通告されていたため、浜田靖一防衛相(当時)が国内落下に備えて「破壊措置命令」を発令。日本海にイージス艦が展開し、飛行コース直下の秋田、岩手のほか、首都圏にも迎撃ミサイル・パトリオット(PAC3)を配備した。

 幸い、発射されたテポドンは日本に落下しなかったものの、2段目と3段目の切り離しに失敗し、3000kmほど飛行した時点で太平洋上に落下したと考えられている。

 先述の通り、'06年の実験では、発射されたテポドン2がものの数十秒で空中爆発した。今回の打ち上げでも、想定外のトラブルが起こる可能性は否定できない。

「不測の事態に備え、防衛省は'09年の発射時と同様、ミサイル防衛システム(MD)による迎撃準備を検討している。具体的には、計画飛行ルート海域にイージス艦数隻を展開するとともに、沖縄県本島や石垣島にPAC3を配備する内容です」(防衛省幹部)

 では、この迎撃体制はどのように機能するのか。専門家の意見を総合して、発射日当日の様子をシミュレートしてみよう。

 北朝鮮が想定する発射日は4月12~16日と、幅がある。これは、強風など気象条件が悪い場合、飛行ルートに誤差が生じてしまうためだ。今回のミサイル発射は、金日成主席生誕100年という重要な国家イベントであり、失敗は許されない。当然、北朝鮮も打ち上げに際しては細心の注意を払うとみられるが、それでも不安は残る。

 日本に向かってミサイルそのものが飛来してくる可能性もあり得るが、より現実的に起こりうるのが「切り離し」のミスによって、ミサイルの部品が飛来してくることだ。防衛省幹部が指摘する。

「'09年に発射されたテポドン2号は、2段目と3段目の切り離しができず、両者は一体となって海に落ちたと推測されている。今回の発射でも、切り離される過程でトラブルが起こる可能性は十分ある。

 例えば、1段目との切り離しの際、2段目の点火に不具合が起これば、ミサイルの飛ぶ方向がガラリと変わり、日本本土に飛来する恐れもある。

 また、そこまでひどくなくとも、切り離しの不具合により、ミサイルのブースターや部品類が飛行ルート直下に位置する沖縄周辺に落下するかもしれない」

 この幹部は、だからこそ防衛省はイージス艦やPAC3を配備する必要があると説明する。だが、残念ながら迎撃が成功するとは考えにくい。

 ミサイルやその部品が落下してくる場合の迎撃の手順はこうだ。

 いざミサイルが発射されると、最初に探知するのはインド洋上空に位置するアメリカの「DSP衛星」だ。

 この衛星はミサイル発射に伴って大量に放出される赤外線を感知し、ミサイル発射情報を米本国および在日米軍基地に伝える。

 さらにDSP衛星からもたらされたミサイル発射の第一報は米軍基地を通じて、ほぼ瞬時に日本のイージス艦にも伝えられる。その後は、イージス艦のレーダーも併用し、ミサイルの軌道計算が行われるが、分析に要する時間は発射から4~5分と見積もられる。

 この時点で、ミサイルが予告通りのルートを飛行すると判断されれば、迎撃は行われない。

 一方、ミサイル本体が何らかのトラブルで日本領土に落ちる可能性がある場合は、イージス艦が迎撃ミサイルSM3を発射する。これは、大気圏外を飛行中の弾道ミサイルを赤外線画像認識により捕捉・追尾し、迎撃するものだ。

 さらに、SM3での迎撃が失敗した場合は、地上に配備されたPAC3からパトリオット・ミサイルを発射し、飛来するミサイルを着弾寸前に撃破する。

 また、部品が落ちてくる場合も、PAC3で迎撃を試みることになる。

 だが、元陸上自衛隊一等陸佐の佐藤正久・自民党参院議員はこう首を捻る。

「確かに、予定されていた軌道通り飛来してくるのであれば迎撃ミサイルをぶつけることもできるでしょう。しかし、トラブルによって軌道がずれてしまったミサイルを迎撃するのは非常に難しい。PAC3もSM3も、『飛んできた鉄砲の玉を、鉄砲の弾で撃つ』ようなものですから」

 元航空自衛官で、軍事ジャーナリストの潮匡人氏も、落下する部品を迎撃することは不可能だという。

「PAC3は弾頭部分の迎撃であればかなりの高確率で当てることができます。しかし、トラブルによって破損した部品や破片などは、空気抵抗もあって不規則な運動をしながら落下してくる。こういう不規則な動きは計算できませんから、迎撃するのは難しい」

 そもそも、PAC3の限られた配備数では守備範囲に限界があるというのは軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏だ。

「PAC3は一機あたり周囲20kmしかカバーできません。今回は沖縄本島や石垣島に配備されるようですが、それだけでは沖縄の離島すべてを守ることなど不可能です」

 そして迎撃をかいくぐったミサイルや部品は、日本に少なからぬ被害をもたらす。

「仮に、ミサイルの2段目より上部がそのまま落下するとなれば、重さ数十tの物体が音速で落ちてくる計算になる。それがどの程度の破壊力か試算は難しいが、市街地に落ちれば多くの死傷者が出るだろう」(防衛省幹部)

 さらに憂慮すべき事態も考えられる。北朝鮮ミサイルの燃料には「ヒドラジン」なる有毒物質が用いられており、万が一、燃料が残った状態のミサイルが落下すると、その周辺に甚大な被害をもたらすというのである。

 ヒドラジンは強い発火性があるため、落下地点周辺で火災を発生させる恐れがある。また、この物質は発がん性が高いうえ、吸い込んだり、皮膚に触れただけで死亡することもある。

 ロシアの宇宙基地からのブースターの落下が多いノボアレイスコエ村では、ヒドラジンの影響により、頭が2つの魚や、足のない乳牛が生まれたほか、多くの人が慢性的な頭痛に悩まされるという。

 '09年のテポドン2号発射の際には、想定飛行ルート直下の岩手県で生物・化学災害対応特別救助隊が編成され、ミサイル落下に備えていた。今回もそうした対策を講じるべきではないか。

迎撃ミサイルは役に立たない
原発施設は大丈夫か、いちばん近い九州は?

 先に見たように、北朝鮮のミサイル襲来に対し、日本には防御する手立てがない。前項では市街地に落ちる可能性を指摘したが、今回の飛行ルートを追っていくと、ミサイルに不具合が起こった際に直撃する可能性が高いのは、九州地方であることが予測される。そこで最も憂慮されるのは、ミサイル本体やブースターなどが、佐賀県東松浦郡玄海町の玄海原発、あるいは鹿児島県薩摩川内市久見崎町にある川内原発を直撃する事態だ。

 もし、これらの原発にミサイルやブースターなどが落ちたらどうなるのか。かつて東芝に勤務し、原発の格納容器設計者だった後藤政志氏はいう。

「そもそも、原子力プラントは航空機が事故で突っ込むような事態さえ想定していません。ですから、もし音速を超えるようなスピードで数tもの物体が落ちてくれば、想像を絶する事態になります。破壊される程度にもよりますが、格納容器、さらに圧力容器が破壊されるようであれば、放射性物質が大量に放出されてしまう」

 また、仮に炉心の真上に落下しなくとも、破片などが周辺に落ちれば、メルトダウンが起こる恐れがあると警告するのは、元衆院議員で防衛政策アナリストの米田建三氏だ。

「炉心が無事だったとしても、ミサイルの破片などが周辺にある電気系統を破壊してしまえば、福島第一原発と同じように給水ポンプが止まり、冷却機能が失われる。そうなればメルトダウンに至るでしょう」

 その場合、被害はどこまで広がるのか、手がかりとなる論文がある。'10年に立命館大学の学生が執筆した『佐賀県玄海原子力発電所におけるプルサーマル事故被害予測』だ。同論文は、玄海3号炉の炉心冷却系が故障して炉心が溶融、格納容器内の放射能が周囲に吹き出すことを想定しているが、そのシミュレーション結果は凄まじい。

 まず、玄海原発から10km以内の玄海町、呼子町、鎮西町では、全人口が急性障害によって死亡。また、玄海原発から10〜20km以内に位置する市町村でも、人口の6〜9割が急性死に至るとの結果が出た。

 被害はそれだけではない。晩発性のがんによる死者も多く、西から風が吹いた場合、福岡では200万人、大阪では48万人、東京や愛知でも、ざっと25万人が晩発性がんによって死亡するという。

 一方、ミサイルの軌道が大幅に逸れることも考えられる。その場合、危険なのは福井県若狭湾に位置し、14基もの原発がひしめく「若狭原発群」にミサイルが落ちることだ。

「京都大学原子炉実験所助手で、'94年に亡くなった瀬尾健さんが、原発別に、破局事故が起きた際の詳細な被害予測を立てています」(前出・米田氏)

 その概要は次のようになっている。

〈敦賀2号炉〉 敦賀市の人口のうち、99%が急性死。〈美浜3号炉〉敦賀市、美浜町の90%以上が急性死。

〈大飯2号炉〉小浜市、高浜町、おおい町の90%以上が急性死する。

 まるでSF映画のシナリオのようだが、しかし北朝鮮のミサイル発射が確実である以上、「現実に想定されうる事態」であることは、間違いないのである。

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