雑誌
大津波を忘れている!M8首都直下型地震「本当の被害予想」
衝撃レポート 頻発する地震、Xデーが迫る中、
村井宗明・衆議院災害対策特別委員長が初めて
明かした最悪シナリオ
元禄大地震(1703年)発生時の津波高を参考に、6mと2mで試算。都東部の浸水リスクが顕著だ。津波が荒川を遡上し、東京北部で堤防を破壊する危険もある

 その時は、突然やってきた。

 ガタガタガタッ! と突き上げるような衝撃に襲われ、テレビや棚が大きな音を立てながら転倒。ガラス類は砕け散り、書類や本が床にブチまけられる。転げ落ちるようにデスクの下に逃げ込み、携帯電話を取り出すが、一向に電話はつながらない。ガタガタッ!

 続けざまに来た余震でオフィスの壁掛け時計が落下し、文字盤が割れた。館内放送によれば、エレベータは復旧の見通しがたたないという。損傷が激しい非常階段を使って、脱出しろというのか・・・・・・。テレビを起こし、スイッチを入れると、爆音とともに燃えさかる羽田の石油コンビナートが映し出された。

 と、画面が切り替わり、江東区や北区の荒川流域で多数の建物が倒壊しているとのリポートが。死者・行方不明者多数との声に続いて、速報が入る。

 中野や野方(中野区)、高円寺(杉並区)の木造住宅密集地で大規模火災が発生しているという。上空を飛ぶ自衛隊機から送られてきたのは、火の海と化した住宅街の映像。道が狭く、消防活動も思うままにならないようだ・・・・・。

 余震で軋むオフィス内に、東日本大震災以来、トラウマとなっている携帯電話の警報音が鳴り響く。余震、そして津波!?

 首相が非常事態宣言をしたというが、相変わらず電話は通じない。家族は無事だろうか。原発は大丈夫なのか、自分はこれからどうすればいいのか—。

*

 地震リスクが日増しに高まっている。

 中でも世間の耳目を集めるのが、昨年3月11日に発生した東日本大震災の巨大余震、そして首都直下型地震だろう。

 今年1月、読売新聞が東京大学地震研究所・平田直教授の「M7の(首都直下型)地震が4年以内に70%の確率で発生する」という試算を取り上げ、列島に激震が走ったのは記憶に新しい(後に東大地震研は最新データで再計算し、「4年以内50%以下」と修正)。

 だが、東日本大震災直後より減ったとはいうものの、多い日で一日二十数回もの地震が発生するなど、年明けから地震の回数は増加の一途。余震や首都直下型地震への恐怖は高まるばかりだ。日本は再び巨大地震に襲われるのか---。

 本誌は国会における災害対策の責任者、民主党の村井宗明・衆議院災害対策特別委員長(38)を直撃。その口から語られたのは、歯に衣着せぬ危機だった。

最大震度7に上方修正

東大地震研究所で「海底地震津波観測装置」を視察する民主党・村井宗明代議士(右)と金沢敏彦・東京大学名誉教授

「首都直下型地震は必ず来ます。明日来てもおかしくない。『4年以内』や『30年以内』という数字にさほど、意味はありません。'95年の阪神大震災をトリガーに、日本は地震活動期に入ったと見られるからです。三つの海洋プレートが入り組んでいる南関東は、世界で最も地震が多い地帯の一つ。それでも、関東大震災(1923年)クラスのM8規模の巨大地震は約200~300年間隔で発生しており、まだ猶予があると考えられていました。

 ですが、この予測は甘すぎた。3月8日に東大地震研の平田教授が報告したように、首都直下型地震の震源が想定より10kmほど浅いことが判明したからです。活動期に入ったことで、首都直下型地震と相模トラフが連動して発生する巨大地震も想定に入ってきた。浅い震源での直下型、相模トラフとの連動—いずれも最大震度は7に至ります」

M8級地震の発生時、関東各地を襲った津波の高さ(単位はm)。上が元禄大地震、下が関東大震災(政府資料より。以下同)

 政府は首都直下型地震の震源地として、都心東部や立川市、羽田など18ヵ所を想定。それぞれで被害予想をシミュレーションしているが、中でも最悪なのが、東京湾北部が震源となるシナリオだ。

 夕方6時、風速15mと仮定した際、建物倒壊によって約3100人(荒川沿いの全壊住宅が顕著だという)、火災によって約6200人など計1万1000人もの死者が見込まれている。重傷者を含む負傷者が21万人、自力脱出困難者が4万3000人も発生。建物やライフライン、交通施設の予想被害額は実に112兆円にものぼる。

 これだけで十分に国家機能は麻痺するが、村井委員長は「この被害予想には重大なポイントが欠けている」という。

「津波です。関東大震災の時は、火災ばかりが注目を浴びていましたが、実は津波も起きていた。相模湾で6mを記録しているんです。地震によって相模トラフが動けば、津波が発生。角度によりますが、東京湾を遡上し、都心を直撃する可能性があるのです。東京は東北より地下鉄や地下街が発達しており、そこに浸水すると死者数は激増します。相模トラフが動く可能性は2%と低く見られていますが、最悪のシナリオから外すのはおかしい」

 東日本大震災を見れば、津波の破壊力は一目瞭然。首都を津波が襲った場合の死者数・被害額は想像を絶する。

 村井委員長が続ける。

「実はマスコミが報道している先ほどの被害予想は、10年前の'02年のデータをもとに算出されています。人口も建物も変わっていることを考慮すべきです。エレベータ被災(停電により震度7で25%、震度6強で20%のエレベータが止まる---村井委員長の試算。以下同)、石油コンビナート被災(京葉で4944件、京浜で3653件)、地下街被災(群集殺到)や液状化のリスクも抜け落ちている。被害予測をやり直す必要があるのです。最新の調査では被害想定のメッシュ(地図のマス目)をこれまでより16倍細かい250㎡単位にして、ピンポイントで火災や倒壊リスクをシミュレーションします。この最新の被害想定を来年春までに発表したい」

 すでに見直しは着手されている。

「まず、首都直下型より発生確率が高い(中部・西日本南側に位置する)東南海・南海トラフにおける津波高と震度分布を3月から4月にかけて発表します。そして6月にその津波高にあわせた人的・物的被害の想定を公表。秋にはそれに伴う、経済的被害の想定を発表します。名古屋市を津波が直撃した場合は地下鉄・地下街が被害を受けるリスクが高い。国民には衝撃が走るかも知れませんが、厳密に精査して公表します。その後、南海トラフの手法(シミュレーションのノウハウ)を使って、首都直下型地震のシミュレーションにかかります」

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