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憤怒レポート第12弾 総額で月10億円にも上るのに対象外!どこが「身を削る」覚悟なのか 公務員給与削減「国会議員秘書(公設)も給与カットしろ!」
消費税増税に取り憑かれた野田首相。党首討論では国会議員の10%の歳費削減を明言したが、実現できるか〔PHOTO〕鬼怒川 毅(以下同)

「国家公務員の給与の削減が、まがりなりにも決まりましたが、同じ国家公務員でも特別職である公設秘書は対象外です。公設秘書の給与の総額は月10億円にも上ります。『身を削る』と言うなら当然、秘書の給与もカットすべきです」

 ジャーナリスト・若林亜紀氏が批判する。国家公務員の厚遇ぶりを追及してきた本誌「憤怒レポート」第12弾は、給与削減の対象から外されている、国会議員の公設秘書問題に切り込む。

 2月29日、国家公務員の給与を削減する臨時特例法案が、参院で可決、成立した。人事院勧告(人勧)の0・23%下げを昨年4月にさかのぼって実施した上で、'12年度から2年間、平均7.8%削減するという内容である。本誌先週号では、その裏で、定期昇給が復活すること、高額の各種手当はカットの対象外になっていることなど、削減法の「大ウソ」を暴いた。

 そもそも、7.8%程度のカットで、しかも2年限定では不十分もいいところだが、若林氏が指摘するように、公設秘書の給与は、削減の対象となっていない。今回、法案が適用されるのは、国家公務員と、大臣、副大臣、政務官だけ。その他の国会議員については、歳費削減で対応するとしているが、公設秘書は、人勧の0・23%引き下げにとどまった。しかも、彼らの給与は決して低くないのだ。

「公設秘書は『国家公務員特別職』という身分で、国会議員一人につき、政策担当秘書一人と、公設第一秘書、第二秘書の3人まで置くことができます。これは国会法で定められている。政策担当秘書は、資格試験に合格した者か、選考採用審査認定者に限られますが、第一、第二秘書には資格が必要ない。

 給与は政治家が所属する院から支払われますが、'12年度の国会所管一般会計の歳出予算明細を見ると、衆院議員の秘書は1440人で給与の年間総額は約82億円。参院は726人で約41億円。両院を合計すると、公設秘書の総数は2166人で年間給与の総額は約123億円となる。月に約10億円が支払われている計算になります。仮に7.8%削減すると、年間9億6000万円だから大きいですね」(全国紙政治部デスク)

ボンヤリ顔が意外にさまになる自民党の谷垣禎一総裁

 約8年間、民主党議員の政策担当秘書を務めたA氏(50代)によると、給料は政策担当秘書が一番高く、次いで、第一、第二の順になる。政策担当秘書の初任給は約42万円で年収約672万円。10年目になると月約51万円で年収約816万円、20年目だと月約55万円で年収約880万円になるという。一方、公設第一秘書は初任給が40万円で年収640万円、10年目で月50万円、年収約800万円。第二秘書は、初任給30万円、年収480万円、10年目で月37万、年収は592万円。なかなかの高給である。

年収は私設秘書の2倍超

 前出・A氏はこう話す。

「公設秘書の年収の平均は同年代の国家公務員の8割程度です。それに、公設秘書はだいたい7~8年ぐらいで辞めてしまいます。私設秘書の給料は月に15万~25万円ぐらい。妻帯者でも25万円程度で薄給です。私設秘書の中には昼はコンビニ弁当で済ませる人も多く、かわいそうなので食堂で食べる時は公設秘書がおごるのが習わしになっています」

公設秘書の給与削減を提案した公明党の山口那津男代表。支持母体がしっかりしているから可能な発言

 しかし、前出・若林氏はこう批判する。

「政策秘書試験に合格したばかりの人でも高い給料をもらっている。政策担当秘書は本来、大変な仕事ですが、公設第一秘書や第二秘書は、議員会館に取材に行くと、ただ椅子に座ってぼけっと中空を眺めているだけの人もいます。議員は地元に帰っているので、秘書は留守番をしているだけとか、忙しさはピンからキリまでですが、それは国家公務員でも同じこと。公務員給与を一律に削ったのですから、秘書だって一律に削るのは当然だと思います」

 今回の公務員給与削減の議論では、公設秘書の給与の問題も取り上げられたが、衆院の任期満了まで1年半しかないこと、現職議員が落選すれば失職するため身分が安定していないことなどを理由に、共産党を除く各党が、削減を見送ることで合意した。前出のA氏は、

「秘書は辞めたら終わりです。どこかの役所で雇ってくれるわけではない。政策担当秘書の資格だって、他ではまったく使えない資格。公務員と違って、身分保証はないんです。秘書を一般的な公務員と一緒にするのはおかしいと思います。あまり秘書をいじめないでほしい」

 と訴える。しかしこの先、さらなる国家公務員改革を進めていくとすれば、いわば身内である公設秘書を対象外にしていては、示しがつかない。何より、岡田克也副総理が言う
「身を削る」姿勢にはほど遠いだろう。

 各党は、公設秘書の給与問題をどう考えているのか。本誌は、10人以上の議員を擁する政党にアンケートを行った。聞いたのは、「公設秘書の人数と平均年収」、公務員給与削減の対象にすべきではないかという点に対する「見解」である。以下、各党の回答を並べる。平均年収については全政党とも回答がなかった。

●民主党 人数回答なし。

「国会議員歳費の扱いと合わせて現在検討中です」

●公明党 衆院63人、参院57人。

「国会議員の歳費削減の協議の過程で、国民的理解が得られるような引き下げをはかるべきと考えます」

●共産党 衆院26人、参院18人。

「秘書給与のあり方について検討する必要があると考えます」

●国民新党 衆議院12人、参議院12人。

「検討中の段階です」

本誌アンケートに唯一、「公設秘書の給与削減は必要」と回答した、みんなの党の渡辺喜美代表

●みんなの党 人数回答なし。

「特別職の国家公務員も公務員人件費の2割削減の対象である」

 明確に「削減対象にすべき」と答えたのは、みんなの党だけだった。他の政党は「検討中」で、自民党はアンケートそのものに回答すらなかった。

 公設秘書の給与に関しては、実態のない秘書名義で給与を受け取り、事務所の経費にあてていたなどとして、辻元清美議員ら複数の議員が詐取で告発された。また、給与の中から献金を強制していた例もあり、批判を浴びた。自分の党内に所属する公設秘書の数すら把握できていないというのには、驚きを禁じ得ない。

 政治評論家・浅川博忠氏が言う。

「国会議員は自分たちに関する各種削減案に及び腰すぎる。野田首相は、議員定数の削減が無理なので、国会議員の給与を削減する法案にすり替えようとしています。我が身を削るというなら、公設秘書もセットで削減の対象にするべきでしょう。国会議員は、後援会を作る際や、有権者からの陳情に対応する際、どうしても公設秘書に頼らないといけないところがある。だから、秘書側に甘い対応になっているのだと思います」

 民主党は、年間約2100万円の国会議員の歳費の14%にあたる300万円を削減する案を打ち出している。実現するかどうか、はなはだ疑わしいが、公設秘書の給与削減も同時に実行すべきである。

「フライデー」2012年4月6日号より

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