[プロ野球]
東京ヤクルト・上野啓輔「暗闇で見つけた希望の光」

アイランドリーグ出身NPB選手は今 Vol.1

フェニックスリーグで原点回帰

「スピードが全然出なくなっちゃったんですよね。昔のほうが絶対良かった……」

 昨夏の横須賀スタジアム。フューチャーズ(イースタンリーグ混成チーム)の一員としてアイランドリーグ選抜と対戦した上野啓輔は悩みのなかにいた。後輩たちにNPBでの成長をみせるつもりが3イニングで4安打を浴びて2失点。NPB入りに伴い、上野は香川にいた頃のフォームを変えていた。

 グラブを高々と上げてから投げおろす独特のスタイルは、ボールに勢いがつくが、ランナーに走られやすい。クイックにも対応できるようフォームを普通のかたちにすると、ボールまでおとなしくなってしまった。

 2軍での登板は1年でわずか5試合。1軍はおろか、目標にしていた支配下登録からも遠く離れ、暗中模索の日々が続いた。しかも9月には腰を痛め、せっかくの登板予定を流してしまった。滅多にないチャンスに意気込みが空回りし、練習で力を入れ過ぎてしまったのだ。
「練習でいくら良くても仕方がない。試合に出ることがすべて。試合で投げて結果を出すことがすべてだと改めて気づきました」

 そんなプロとして当然のことを忘れてしまうほど、上野は自分を見失っていた。慣れない環境に振りまわされ、あっという間にシーズンが終わった。

 暗く長いトンネルに光が差したのは、秋の宮崎フェニックスリーグだ。上野は原点に戻り、思い切ってアメリカの独立リーグにいた頃のフォームで投げた。
「これが意外とハマりました。昔のようなボールが戻ってきた。1年の最後にようやく次につながるピッチングができましたね」

 5試合に登板して失点はわずかに1。ワインドアップでリズムよく投げるスタイルで打者を牛耳った。2軍で指導してきた加藤博人投手コーチが「夏までは全然ダメだったけど、140キロ以上のボールが放れるようになってきた。これからが楽しみ」と期待するほどだ。