アメリカのリベラルアーツ教育も時代遅れ?!
不満を感じる学生たちが計画する日本発の新教育

 アメリカのリベラルアーツ教育を称賛する書籍や経験者の談話が日本でも目立ってきた。アイビーリーグの現役日本人学生が中心となって、日本の高校生向けにリベラルアーツ教育を紹介するサマースクールも、今年は複数開催されるようだ。日本でも、何の経験もない18歳の高校生に学部を選ばせるような教育ではなく、科目に横櫛をさすように色んな学問を幅広く、文字通りに"自由に"学べるリベラルアーツ教育に対する関心が高まりつつあるように思う。

 しかし、本場アメリカではリベラルアーツ教育に対する不満も聞かれるようになってきた。

 現在アイビー・リーグでもトップクラスの学生たちが赤裸々に語ってくれた。「入学したての昨年1年間は大学のリベラルアーツ教育に感動してばかりでした。しかし、1年がたって、その興奮がおさまり、アメリカの世界最先端の大学教育にも問題点が見えてきました」という。

「一言で言って、今の僕たちが使うテクノロジーやグローバル化についていっていない先生がけっこういるんです。そろそろアメリカのリベラルアーツ教育も曲がり角にきているのかもしれません」

「僕らがウキペディアで論文書いたり、スカイプで議論したり、フェイスブックで答え合わせしたりしていることを理解できない先生もいると思います。今のテクノロジーをもっと駆使した教育ができるはず。それを日本で自分が教える立場でロールプレイしながら考えてみたいです」と。

「アメリカの名門大学の教授の"教育力"に問題がある」という指摘はある。大学教授に問われるのは"教育力"だけでなく"研究力"。特に研究を重視する名門大学ほど、教授が研究力重視で動機付けられている可能性がある。もちろん、彼らは次世代の教育の重要性を認識しているので、研究と教育の両立に悩んでいる。しかし、"研究成果"が実績として昇進を左右するので、優れた若手研究者ほど教育より研究を重視せざるを得ないといわれる。

ザッカーバーグが中退した気持ちがわかる

 これらの学部生たちによると「だいたいざっくりいって教授たちの40%は期待以上です。残りの30%は期待並み。最後の30%は期待以下ですね」という。

「教え方がつまらないので、出ていない授業もあります。でも僕らはスマホで本を読み、スカイプで皆で議論すれば理解できてしまうのです。だから単位は取れてしまいます」

「中退してしまったマーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツの気持ちがわかります。先が見え過ぎていた彼らにはつまらなかったのではないでしょうか?」

 とふと彼らが漏らした。それを聞いて「これからの社会では学位の意味も変わってくる。学位がなくても成功できる人は増えていくよ。早く社会に出たら?それともできる過ぎる君たちは飛び級したら?」と聞くと、

「やっぱりせっかく入って高い学費を払っているので学位は欲しいです(笑)。それに飛び級はできると思いますが、したくないですね。今が一番いい青春の時期です。それをわざわざ短くしてしまうのはもったいないです」

 と笑った。私は前から付き合っているだけに彼らのポテンシャルは高く買っている。相当なことを世界を舞台にやらかしそうな連中だ。やはり本当に"世界を動かすような人材"はハーバードやエールといえども、大学教育の中でじっとしていられないのだろう。ザッカーバーグやゲイツも4年間も我慢できなかったのだろう。

 彼らがすごいのは批判で終わらないこと。「今の教授たちがつまらないからといってそれで話を終わりにしたくありません。つまらなかったら僕らがおもしろくすればいいと思います。最新のテクノロジーや学生のグローバル化を逆手に取ったおもしろい教え方を生み出し見せます」と胸を張る。

アイビーリーガーたちは、「日本は寺小屋や藩校等、世界に先駆けて素晴らしい教育システムを生み出したところ。幕末の諸藩では、世界中の古典を読み、歴史を学びながら、科学も勉強していたと聞きます。リベラルアーツ教育は日本にあったのです。次の時代の教育を日本から生み出してみたいです」と目を輝かせる。

 なんと彼らは、この夏日本に来て、新たなリベラルアーツ教育を模索するサマーキャンプを日本でやる計画だと言う。「今のアメリカ名門大学の教え方に不満を持つ自分たちが日本の高校生相手にロールプレイで先制をやってみて、日本の学生たちとこれからの教育を一緒に考えてみたいです」と計画を披露してくれた。これは非常におもしろい。できるかぎり応援したい。高校生を中心に日本人40名ほどを集めて日本でサマーキャンプを計画中。既に相当なスポンサーも集めたらしい。

「何かを教えるというスタイルではなく、皆で一緒に何かをデザインするというサマーキャンプにしたいです。モノで社会システムでいいので自分でデザインしていくのです。そのために社会で色々とデザインをしているプロフェッショナル達に先導役として参画してほしい」とアイビーリーガーたちは語る。何かをデザインさせる教育なんて最高だ。教える側も相当のクリエイティビティが必要だし、学生からも学べる。

問題は日本の高校生でその教育に参画して貢献できる者がどれくらいいるだろうかということだ。アメリカのリベラルアーツ教育についていくだけでも日本人には至難の業だのに、今回はさらにその先を行くような話だ。ネイティブなアメリカのアイビーリーガ―たちに混ざってガンガン発言して、何かをデザインしていく若い力をどうやって集められるか?案ずるより産むがやすし。

「日本の若者には相当なポテンシャルがある人が多いとみています。ただ問題は英語力。そういう意味で大学生や若手社会人の方からも参加の募った方がいいかもですね」とアメリカ学部生は現実的に柔軟に対応する構えだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら