アメリカのリベラルアーツ教育も時代遅れ?!
不満を感じる学生たちが計画する日本発の新教育

2012年03月26日(月) 田村 耕太郎

 アメリカのリベラルアーツ教育を称賛する書籍や経験者の談話が日本でも目立ってきた。アイビーリーグの現役日本人学生が中心となって、日本の高校生向けにリベラルアーツ教育を紹介するサマースクールも、今年は複数開催されるようだ。日本でも、何の経験もない18歳の高校生に学部を選ばせるような教育ではなく、科目に横櫛をさすように色んな学問を幅広く、文字通りに"自由に"学べるリベラルアーツ教育に対する関心が高まりつつあるように思う。

 しかし、本場アメリカではリベラルアーツ教育に対する不満も聞かれるようになってきた。

 現在アイビー・リーグでもトップクラスの学生たちが赤裸々に語ってくれた。「入学したての昨年1年間は大学のリベラルアーツ教育に感動してばかりでした。しかし、1年がたって、その興奮がおさまり、アメリカの世界最先端の大学教育にも問題点が見えてきました」という。

「一言で言って、今の僕たちが使うテクノロジーやグローバル化についていっていない先生がけっこういるんです。そろそろアメリカのリベラルアーツ教育も曲がり角にきているのかもしれません」

「僕らがウキペディアで論文書いたり、スカイプで議論したり、フェイスブックで答え合わせしたりしていることを理解できない先生もいると思います。今のテクノロジーをもっと駆使した教育ができるはず。それを日本で自分が教える立場でロールプレイしながら考えてみたいです」と。

「アメリカの名門大学の教授の"教育力"に問題がある」という指摘はある。大学教授に問われるのは"教育力"だけでなく"研究力"。特に研究を重視する名門大学ほど、教授が研究力重視で動機付けられている可能性がある。もちろん、彼らは次世代の教育の重要性を認識しているので、研究と教育の両立に悩んでいる。しかし、"研究成果"が実績として昇進を左右するので、優れた若手研究者ほど教育より研究を重視せざるを得ないといわれる。




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。