『史上最大の口コミ動画によるアクティビズム・キャンペーン、「KONY2012」から何を学ぶか』
「KONY2012」のキャンペーン動画(既に日本語版を含む各国語版の字幕翻訳もインターネット上で拡がっている。)

史上最大の口コミ動画によるアクティビズム・キャンペーン、「KONY2012」とは?

 2012年3月5日にインターネット上に出現した約30分のバイラル動画、「KONY2012」が欧米を中心に世界中で大きな話題になっています。1億人の視聴者数をたった6日間で達成し、それまでの記録である9日間(オーディション番組のパフォーマンスで一躍有名になったスーザン・ボイル(Susan Boyle))の記録をあっさり抜き去ったこの史上最大の動画に対し、当初の賞賛、そして批判・分析が入り交じり、今日もなお大きな議論を巻き起こしています。

  日本ではあまり報道されてないこの「現象」に対し、海外論壇においてはアカデミック、ジャーナリズム、人道支援、外交・安全保障、ソーシャルメディア・マーケティング等様々な専門的視点から批判、分析、論点整理が行われ、如何に今回の一件から学びや教訓を引き出すことが出来るか、という点に議論が推移しているようです。

Visble Measures社の資料より。動画共有サイトYoutube(8300万回)Vimeo(1740万)上の公式動画以外にも各国語版を含めた多くの動画が共有されています(3/20/2012時点)。

 このバイラル動画の内容は、ウガンダ共和国の反政府武装勢力組織「Lord's Resistance Army」(神の抵抗軍)のリーダー、Joseph Kony(ジョセフ・コーニー)に世界的なスポットライトを当てることで、過去26年に渡り残虐行為を行い、人道に対する罪で国際刑事裁判所から逮捕状が出ているこの人物を、2012年内に逮捕をすることを目的としたものになっています。

 2003年に設立された米非営利団体、Invisible Children(インビジブル・チルドレン)により作成されたこの動画は、元々高校生や大学生向けに作成されたとされ、非常に分かりやすい(単純化した)ストーリー構成になっており、ジョセフ・コーニーが今までいかに残虐な行為を行ってきた悪人であるかを伝え、多くの人の注目を集めることでこの非常に複雑な問題を解決できると謳っています。

 また、誰でもがこのムーブメントに参加できると呼びかけ、キャンペーンのことをソーシャルメディアで共有したり、著名人や主要政策決定者にTwitterで協力を呼びかけたり、30ドルで購入できるアクション・キットを購入したりすることで「KONY」を有名にさせる等、具体的な行動を促すしかけが特に若い世代を中心に受け、大きな反響を呼び起こしました。

 著名トークショー・ホストであるオプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey / Twitterのフォロワー数:約1000万人)、世界的に絶大な人気を誇るアイドル歌手ジャスティン・ビーバー (Justin Bieber / 同:約1860万人)、著名ジャーナリストで途上国の人道支援にも取り組んでいるニューヨークタイムズのコラムニスト、ニコラス・クリストフ(Nicholas Kristof / 同:約123万人)等もこのキャンペーンを支援する内容を早々にツイートしたこともあり、瞬く間に多くの人の間での話題に登ることとなりました。

 一方、この動画そのものが複雑な現地の状況を過度に単純化することで多くの人に誤った認識を植え付けているのではないかという批判、現地のウガンダ北部に居る被害者等、地域コミュニティの声を十分に盛り込んでいないのではないかという疑問、またInvisible Childrenの組織そのものや活動資金の開示内容に対する批判等、厳しい声が多方面の専門家からも寄せられている状況が続いています。

 3月16日には動画の制作者であり、動画の中で彼自身の3歳の息子とともにナレーターとして登場しているInvisible Childrenの共同設立者であるJason Russel(ジェイソン・ラッセル)氏が、極度のプレッシャーから全裸で路上において奇行に及び警察に拘束され、入院するという事態に至りました。動画の中では一人称で自分の息子にも分かるようにウガンダで起きている非人道的な事態を語っていた分、動画に対する批判も極めて個人的なものとなり、彼のことを「悪魔」扱いするバッシングが多数寄せられたそうです。「ビデオのリリース以降、9日間全く寝てない」とインタビューで答えるほどでした。

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