磯山友幸「経済ニュースの裏側」

東電と政府は何を隠したいのか。国会事故調に立ちはだかる「隠蔽」

2012年03月21日(水) 磯山 友幸
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 国会が設置した「東京電力福島第一原発事故調査委員会」(委員長、黒川清・元日本学術会議会長)の調査が本格化している。3月14日の第6回委員会に続い19日にも第7回委員会を開催。政府の検証委員会や東電自身の調査とは違った独立した立場で、事故の原因や原子力規制の問題点などについて関係者の聞き取り調査などを行っている。

 国会が持つ国政調査権を後ろ盾にした比較的強い権限を持っているものの、委員の多くが「壁」を感じ始めている。政府や東電の「隠蔽」体質が立ちはだかっているのだ。東日本大震災から一年が過ぎたにもかかわらず、いまだに何を隠そうというのだろうか。委員たちは不信感を募らせている、という。

「記録がどんどん抹消されているという話が聞こえて来たので、かなり焦っているんです」

 国会事故調の関係者は委員会の開催頻度を上げている理由をこう話す。震災後に開かれた政府の原子力災害対策本部などの会議の議事録が作られていなかったことが明らかになったが、議事録が作られなかったからと言って記録がないことと同義ではない。会議に参加する多くの官僚がICレコーダーなどを持ち込んでいるからだ。「親元(出身官庁)に報告するのが官僚の仕事だから、記録していないことなどあり得ない」(事故調設置に関わった国会議員)。

 国会事故調の 黒川委員長が原災本部の議事録がなかったことについて会見で「全く信じられない。理解不可能だ」と述べる一方で、閣僚のメモや“資料"の提出を引き続き求めたのも、音声記録を残す官僚の“慣習"を知っていたからに他ならない。その記録が「どんどん抹消されている」というわけだ。

 3月14日の第6回委員会でも、こうした“隠蔽作業"の傍証が明らかになった。

 国会事故調のメンバーは東電本社や福島第一原発などにも出向いて調査している。

 その際、震災直後の昨年3月15日の早朝、菅直人首相(当時)が東電本社に乗り込み、大演説を行った。その際の映像が東電本社や各原発を結ぶテレビ会議システムに録画されて残っており、それを見せられたのだという。ところがその会議だけ画像だけで音声は無し。14日の委員会でも委員の野村修也弁護士が「聞いたところ家庭用のDVDと変わらないシステムだそうで、なぜ音声だけ無いのか。他の会議の音声はあるのに」と疑問を呈した。

 委員会に参考人として呼ばれた武藤栄・東電顧問(事故当時は副社長)は「(音声がないのは)どうしてなのか承知していません」と淡々と答えた。音声が消えていることに何ら驚きも疑問も感じていない様子だった。

「まるでロッキード事件の証人喚問みたいだった。誰かに余計な事は言うなと言われているんじゃないか」と国会事故調の関係者は訝る。ロッキード事件では国会に証人として呼ばれた商社の副社長が、宣誓書へのサインでは手が震え、肝心な点になると「記憶にございません」と逃げた。武藤・元副社長は、菅首相の大演説をすぐそばで聞いていたにもかかわらず、肝心の中味になると、急に口数が減った。

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