硬直化した「社会保障と税の一体改革」は基本に立ち返り別々に議論せよ
〔PHOTO〕gettyimages

 野田首相が「不退転の決意」で取り組んでいる「社会保障と税の一体改革」は、民主党内の意見集約が順調には進んでいない。問題が消費税増税議論に矮小化されてしまい、社会保障の全体像も、税制改革の展望も明確になっていないからである。だから、先週(3月13日)の参議院予算委員会で、私は野田首相に対して、社会保障と税を別々に議論したほうが生産的ではないかと疑問を呈しておいたのである。

 それは、社会保障制度と税制、それぞれが時代の要請に合わなくなっているからである。そこで、基本的な改革の視点を示しておきたいと思う。

 第一に、現役世代にもっと注意とコストを払うことが必要だということである。年金、医療、介護という社会保障の三大課題をあげると、どれも高齢者が主体の問題のようにみえる。しかし、高齢者の年金を今負担しているのは、現役世代であるし、高齢者医療制度もその財源のほとんどは現役世代が拠出している。介護保険も半分は40歳以上の国民の保険料、半分は税金で賄われている。

 ところが、社会保障の給付をみてみると、高齢者むけと現役世代むけとが7:1である。この比率を、せめて2:1くらいにまで縮める必要があろう。とくに子育てにもっと財源を振り向けるべきである。そうしないと少子化に歯止めがかからない。高齢者の生活を支えているのが現役世代で、彼らが疲弊してしまっては、高齢者福祉も成り立たないからである。現役世代が、自分の望むような勤労と生活がきちんとできるようにせねばならない。これこそが、政府のいう「全世代型対応」の社会保障である。

 そこで、第二に重要なのは、仕事を持ち、家庭と両立させようと頑張っている女性の立場から社会保障制度も税制も改革することである。女性が結婚したら家庭に入り、専業主婦になるというパターンを優先させることは時代遅れである。たとえば、年金制度がそうである。専業主婦のほうが、働く女性よりもはるかに優遇されている。共稼ぎの女性は、夫が死去後も、自分のかけてきた年金が支給され、これは課税される。ところが、専業主婦は配偶者が死ぬと遺族年金が支給されるが、これは非課税である。

 たとえば、こういう不公平は是正していかなければならない。そもそも、保険料を払わないのに、専業主婦に年金が支給されること自体がおかしいという不満が、働く女性にはある。専業主婦は、「内助の功」論で反論するが、このような問題についてもっと議論を深める必要がある。

政策の根幹が揺らいでいる

 年金も携帯電話と同様に、個々人のポータブルにすべきである。結婚しようが離婚しようが、年金が個人に帰属することを明確にしたほうがよい。医療や介護は、すでに個人単位のポータブルになっている。そのためにも、一刻も早く社会保障番号(マイナンバー)を導入せねばなるまい。

 第三に、税と保険料の違いについて、正確な認識が必要である。国民健康保険料や国民年金保険料の滞納や未納が増えているため、その徴収を促進させようとして、保険料も税と同様に強制的に徴収せよという意見が強まっている。歳入庁構想の狙いもそこにある。

 しかし、両者は別のものである。社会保険料に関しては、介護保険料のような定額なものは、逆進性が強い。貧しい人ほど、負担が大きくなる。しかし、所得税は、累進構造になっているので、高額所得者ほど負担が大きくなる。つまり、所得税は再配分機能を有しているのに対し、保険料はそうではない。そこで、保険原理に基づくのか、それとも所得再配分機能を優先させるのかで、政策は随分と異なってくる。

 本来は、社会のセーフティネットは税で担保すべきであり、社会保険料の果たすべき機能は別のところにあると言ってもよい。そしてまた、社会保障政策そのものが、所得再配分の役割を果たすことを忘れてはならない。

 以上のような議論を国民的規模で行うことこそ、明るい社会を作る基本なのである。今の社会保障と税の一体改革をめぐる議論には、基本的に重要な認識が欠けているように思えてならない。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら