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とんでもないことに・・・
「民事再生申し立て」のその日まで会員を集めていた 名門「太平洋クラブ」会員1万3000人の悲劇

 全国のゴルファーに衝撃を与えたゴルフ場会社の倒産。その裏には、超有名企業の名を使った騙しのカラクリと、日本独自の奇妙な習慣があった。責任は誰にあるのか。失ったものは取り戻せるのか。

預けた金が返ってこない

 タイガー・ウッズの奇跡のチップイン・イーグルから、近年は石川遼の「三井住友VISAマスターズ」優勝まで、数々の伝説を生み出してきた太平洋クラブ御殿場コース。日本最高のゴルフコースと謳われる大舞台だ。

 ところが先日、ここを運営する「太平洋クラブ」が破綻してしまった。1月23日に民事再生法の適用を裁判所に申請し、事実上、倒産したのである。

 太平洋クラブと言えば、'71年に設立され、御殿場をはじめ、札幌、軽井沢など18の人気コースを展開してきたゴルフ界きっての名門企業。それが倒産したのだから、「あの太平洋クラブが潰れるのか!」とゴルフ界は大騒ぎになった。

 同社は民事再生の申し立てと合わせて、新興系の業界最大手「アコーディア・ゴルフ」とスポンサー契約を結んだ。つまり今後、民事再生が認められれば、アコーディアが太平洋クラブのコースを買って、運営することになる。

 負債総額は1276億円。全国のゴルファーが憧れるコースを持つ会社が、なぜここまで巨額の借金を抱えて倒産したのか。その大きな原因は、日本のゴルフ界にしか存在しない「預託金」というシステムにある。

 ゴルフジャーナリストの宮崎紘一氏が言う。

「ゴルフ場の会員になるには、会員権を買いますが、そのお金はゴルフ場側に預けられる『預託金』とされます。預けているお金ですから、当然、退会時には返ってくるし、そうでなくても普通は10年で償還される。そこを『あと10年延長しよう』ということを繰り返し、預けっぱなしにする会員が多かったんです。

 考えてみると、これはおかしな制度で、預託金には利子がつかず、売り上げに計上しなくてもいい。だから税金もかからない。有価証券報告書に記載しなくてもいい。要するに、まったく法的な制約を受けず、ゴルフ場側が勝手に何に使ってもいいお金なのです」

 景気のいい時代には、そうやって集めたお金が好循環をもたらした。会員権を売買するマーケットができ、その値段が上がり続ける間は、人々は会員権を買い、持ち続け、返金を求めることも少なかった。要するに、会員権は格好の投資対象になったのだ。

 その結果、ゴルフ場には預託金がどんどん集まっていく。バブル期には、額面300万円の会員権が1000万円を超えるケースなどザラだったという。

 問題は、ゴルフ会員権相場が上昇している限り、退会する会員は会員権を市場で売ればいいから、ゴルフ場運営会社は預託金を返さずにすむシステムだったことにある。金融ジャーナリストの伊藤歩氏が言う。