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大特集「コンプライアンス日本」を生き抜く知恵 身の破滅を防ぐ「法律」の知識と適切な「反撃」

 いわれのないパワハラ、セクハラで告発された/自転車事故、そのまま逃げた/いきなり警察に職務質問された/痴漢に間違えられた/中学時代の親友がヤクザ/ヤミ金からカネを借りた/ネットで悪口を書かれた/酔って駅員を押してしまったほか

 かつてはよくも悪くも内々の話し合いで済んでいたことが、近頃やたらと裁判になる。「コンプライアンス日本」---訴訟社会になってしまったこの国では、日常のトラブルが法廷闘争に発展することがもはや珍しくない。「ついつい、うっかり」問題を起こしたとき、どうすればいいのか。

■自転車で対人事故を起こし、そのまま逃げた

「逃げたままで逮捕されるより、すぐに現場に戻って被害者の救護と通報を行ってください。

 自転車は道路交通法上、『軽車両』といって車両の一種。飲酒運転も禁止ですし、事故を起こして逃げれば『業務上過失致死傷罪』(5年以下の懲役もしくは禁錮もしくは100万円以下の罰金)などが適用される上に、いわゆる『轢き逃げ』になります。

 車両の運転者や同乗者には、事故の際に『救護義務』があって、轢かれた人を助けなければ罪が重くなるのです。道交法の『救護措置義務違反』(3月以下の懲役または5万円以下の罰金)がこれに当たります。また、通報しなければ『報告義務違反』にも問われます。

 とっさに、高額な賠償金が払えないと思って逃げる人もいるかもしれませんが、自動車保険などの付帯で自転車の個人賠償責任保険もついているものが多くあり、それほど高い掛け金ではありません。3・11以降、自転車通勤が増えているようですが、乗る機会の多い人は保険に入っていれば、カネの心配で逃げて罪を重くすることもないでしょう」(桐生貴央弁護士)

■財布を拾ったら中身が500円だけだったので、そのまま持っていた

「拾った場所によって、問われる罪が変わります。

 管理者のいる、デパートの中や駅の構内などで拾った場合、財布は店や駅の管理下にあると考えられて窃盗罪に、河川敷や公道上などで拾った場合は遺失物等横領罪にあたります。

 いずれも、着服した金額が1円であっても罪は成立するのですが、実際には、500円程度と額が少ない場合は書類送検もされない微罪処分になる可能性が大です。ただ中身が500円でも財布が5万円ということもあるので注意が必要でしょう。

 また、1週間も2週間も手元に置いてから届け出ると、『いったん自分のものにしていたのだから、すでに犯罪は成立している。これは届け出ではなく自首だ』と受け止められる可能性もある。拾ったら速やかに警察に届けることです」(岡林俊夫弁護士)

「忙しくて届け出るのも面倒だと思う方は、そもそも財布を拾わなければ何の問題も起きません。落とし物を見たら拾わなければならない、という法律はないのですから」(桐生弁護士)

■スピード違反でつかまった。納得できない

「これは難しいですね。オービス(自動速度違反取締装置)のカメラに映っている場合もあるでしょうし、速度も計測されている。証拠を突きつけられたときに、言い逃れは出来ませんからね。わざわざ裁判をして、速度計の不備などを主張してもまず勝てません。費用を考えれば、納得できなくても仕方ないでしょう」(岡林弁護士)

職務質問は拒否していい

■いきなり警察に職務質問された

「職務質問は任意ですので、応じる必要はありません。任意同行を求められた場合も同じです。

 ただ、警察官は不審でもない人に職務質問をすることはしません。拒否するとますます『アヤシイ』と思われ、警察官は無線で応援を頼みます。 すると、やはり職務質問に応じなかった『のりピーの元ダンナ』のように、あっという間に4〜5人の警察官に囲まれます。『クスリでも所持しているんじゃないか』『拳銃でも隠しているんじゃないか』と疑われ、しつこい職務質問が延々と続く。

 そうした状況では、何かのはずみに警察官の身体に触れただけで、公務執行妨害で逮捕される可能性が大です。

 何も非がないのであれば、『職務質問は任意だろう』と生かじりの法律論を振り回すよりは、不審事由が解消されるよう説明した方が賢明です」(中村勉弁護士)

■痴漢と間違えられた

「やっていない場合、まずは現行犯逮捕をされないことが大切です。

 逮捕の前に駅員室などで相手の女性との話し合いが持たれると思うのですが、たとえば、電車の中で自分はこういう位置関係にいて、痴漢ができる状況ではなかったなどと冷静に証明をする必要があるでしょう。もし感情的な言い争いになった場合でも、『おまえのような女に興味はない』などと、相手の人格を攻撃することは得策ではありません。逮捕前でも、駅に弁護士を呼ぶことも有効です。

 逮捕されてしまった場合、罪状は都道府県の迷惑防止条例違反になることが大半でしょうが、ひどいケースだと強制わいせつとされる場合もあります。

 最近、東京・品川区の路上で小学生の女児のスカートをめくってお尻を触ったとして逮捕されたカナダ人の男が、取り調べに対して『スカートはめくったがお尻は触っていない』とややこしい主張をしてスポーツ紙に取り上げられました。スカートめくりは軽犯罪法違反か東京都の迷惑防止条例違反ですが、それ以上となってくると強制わいせつとして起訴される場合もある。我々の間では下着に手を入れることが、強制わいせつになるかならないかの境界線になっています。

 ただ、やっていないならこんな言い訳をする意味はありません。逮捕・勾留されても、とにかく否定し続けることです」(岡林弁護士)

「もし痴漢をやっていないのに、逮捕されただけで会社を解雇されるようなことがあれば、のちに解雇を撤回してもらうことができます。これについても弁護士に相談するとよいでしょう」(大坪和敏弁護士)

■交通事故を目撃したが、面倒くさいので帰宅した

「通りがかりの人には法的な通報義務はありません。ただ、道義上の問題は生じることになるでしょう」(桐生弁護士)

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