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そのとき、あなたは?医者は何を考えている?/本当にもうダメなのか 奇跡は?/覚悟のつけ方/残りの時間 「手遅れです」の大研究
週刊現代 プロフィール

 手術はせず、抗がん剤治療で対応するのが一般的だが、その効き目も次第に悪くなり、がんが広がっていく。「治りにくいというより、治らないと考えたほうがいいがん」と言われている。

手術しても意味がない

国際医療研究センター病院の斉藤幸夫医師

 こうしたがんの場合、医師は、患者や家族に何らかの覚悟を促さざるをえない。だが、そもそも「手遅れ」とはどんな状態なのか。

 大腸がんを専門とし、これまで約3000もの症例を診てきた国立国際医療研究センター病院外科部長の斉藤幸夫医師が説明する。

「たとえば、大腸など消化器系のがんで『手遅れ』という状態は、切除できない遠隔転移が見られた場合です。また、手術しても意味のない場合も同様です。

 遠隔転移には、肝臓や肺などに行く血行性転移と、小さながん細胞が広範囲に飛び散った状態になる播種があるのですが、特に難しいのが播種です。診断で播種があるとわかったら、ほとんどの場合、手術はしません。中には開腹しないとわからない播種もありますが、その場合も『残念です』と言わざるをえない。大腸がんで手遅れ状態だと、年齢に関係なく余命は6ヵ月前後になります」

 心臓病はどうか。須磨ハートクリニック院長の須磨久善医師が言う。

「心臓で『手遅れ』というケースは二つあります。一つは、今さら手術をしても、もはやどうにもならないほど状態が悪化しているケース。もう一つは、手術自体はできるけれども、脳梗塞を起こしていたり、腎臓が悪すぎる、肺が悪くて麻酔をかけられないなど、他の臓器の状態が最悪で手術ができないケースです」

 倒れてそのまま逝ってしまうケースが多いのが脳卒中(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血の総称)だが、荏原病院の脳神経外科部長・土居浩医師によれば、脳の場合は倒れてから治療にかかるまでの「時間」が生死を分けるという。

「脳梗塞の治療では、詰まった血栓を溶かすt-PAが使えるかどうかが勝負です。この薬が使えるのは、倒れてから3時間以内。3時間を過ぎると、薬が効きすぎて脳の血管が破れ、脳出血に陥るなど副作用の恐れがあるため、使ってはいけない取り決めになっているのです。ただし、使えたら助かる可能性が飛躍的に大きくなる。

 脳出血も発症から治療までの時間が長引くほど出血の量が増えるので、時間が勝負になります。ですが、くも膜下出血は事情が違う。倒れたその時点で、3人に1人は亡くなってしまいます。これは運としかいいようがない。ですが、3分の2は手術で助かるので、経験したことのないような頭痛が突然起こり、吐き気を伴うような場合には、すぐに病院へ行ったほうがよいでしょう」