雑誌
そのとき、あなたは?医者は何を考えている?/本当にもうダメなのか 奇跡は?/覚悟のつけ方/残りの時間 「手遅れです」の大研究

「まさか自分には」そう思っているから、想像もつかない。でも誰にでも起こりうる。手遅れとはどんな状態なのか。言われてしまったらどうすればいいのか。そうなる前に、知っておくべきことがある。

「3~4ヵ月で亡くなります」

 ある日突然、「残念ですが、手遅れです。手の施しようがありません」と医師から告げられる。自分や家族がそんな状況に直面するかもしれないと、一度でも想像したことがあるだろうか。

 高梨聡美さん(仮名・44歳)は、昨年2月、突然、夫の「手遅れ」宣告を受けた。子どもは小学6年生の長女と3年生の長男。夫は働き者の商社マンで、夫婦仲は円満だった。

「夫のいない部屋で、医師から『悪性の小細胞がんで、ステージⅣの可能性が高い。最悪のケースも考えられます』と宣告されました。その言葉で頭が真っ白になり、あとは何を言われたか、まったく記憶がありません。私の隣で義母がただ嗚咽をもらしていたのを覚えているだけです」

 高梨さんは、呆然としたまま自宅に戻り、義父、義母と話し合いをした。

「義父が、『諦めるな、まだ決まったわけじゃない』と言った言葉に、少し冷静さを取り戻しました。ですが、精密検査の結果は残酷でした。先生から『もって半年。約半数の方は3~4ヵ月で亡くなるレベルです』と。頭をガーンと殴られたような気分で、直後には主人の目を見ることすらできませんでした。何か言えば泣いてしまいそうだったからです。結局、主人には義父から事実を伝えてもらいました。私はあまりにもつらくて同席できませんでしたが、主人は一言も発せず、ただ黙って聞いていたそうです。

 それから、私たちはあらゆる手段を使って、名医や最新の治療法を探しました。少しでも望みがあるのなら、と民間療法も試しましたし、海外の情報も調べました。ただ、子どもたちには、とても言えなかった。家の中は、異様な雰囲気が漂っていたと思います。でも、とにかく治ってほしい、これが夢であってほしい、そう思い続けました。まさか自分の家族がこんな状況になるなんて思ってもいませんでしたから」

化学療法研究所附属病院の小中千守医師

 高梨さんのご主人を襲った病魔は、がんの中でも死亡率が最も高い肺がんだった。化学療法研究所附属病院副院長の小中千守医師(呼吸器外科)が言う。

「肺がんの場合、早期のステージⅠであれば完治するケースが多いですが、その段階で発見されることは健診以外では非常に稀です。Ⅰだけでなく、ステージⅡを含めても、手術ができる状態の患者さんは全体の20%ほど。中でも高梨さんのような小細胞がんは進行が早く、手術ができないことが多いのです」

 肺がんは「小細胞がん」と「非小細胞がん」に大別される。治る可能性があるのは後者で、小細胞がんとなると完全治癒の見込みは極端に低くなる。仮に初期で見つかったとしても、すでに転移している場合が多い。