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 政権交代以降、野放し状態だった天下り規制がようやくワークし始めることになるのだろうか。3年間も休眠状態が続いていた再就職等監視委員会の委員長と委員の人事が3月1日、国会で承認された。

 中央省庁の天下り斡旋などは、安倍政権下で法案を作った国家公務員制度改革で禁止。退職管理を行う組織として'08年12月に監視委が設置された。だが、「天下り全面禁止」を主張していた野党・民主党は、一時的に天下り斡旋を承認する権限が監視委に付与されたことが問題だという理由で、人事案を3度にわたって不同意にした。

 '09年9月に政権交代して与党の座に就いた後も、民主党は監視委の機能強化が先決だとして人事案提示を見送ってきた。マニフェストで「天下り根絶」を掲げた民主党政権だが、天下り規制はなにひとつ機能していないのだ。

 政権交代後1年間における役人OBの再就職状況をみると、独立行政法人や公益法人など1040法人の計4240ポストに役人OBや各省庁職員の「現役出向」者が就任。民間企業に再就職した審議官級以上の役人OBも101人いる。この4240+101=4341人について民主党政権は「天下りではない」と強弁してきた。財務省財務官の指定ポストとされる国際金融情報センター理事長や、経産省事務次官級の指定ポストになっている日本エネルギー経済研究所理事長など、特定法人の役員に同じ省庁からOBが再就職した例が多数あるにもかかわらず、である。

 そもそも民主党政権の天下り規制はザルだ。自公政権下で定められた「退職前5年間の職務と関係の深い業界への再就職は2年間禁止」というルールさえ存在しない。また、民主党政権は総理に「天下り監視」の権限を与えたが、その権限に基づく調査を行わずに、各府省に「斡旋の有無」を問い合わせるだけ。当然のことながら、役所側は「斡旋は行っていない」と答えるが、調査を行わないので、政権交代後の天下り斡旋の実態は闇の中だ。

 '10年10月には、早期勧奨退職(肩たたき)を受けた公務員1590人中、勧奨を拒否したのはたった2人だけだったと民主党政権は明らかにした。定年より早く辞めるわけだから、その後の再就職先が確約されていれば勧奨を受けるだろうが、そうでなければ躊躇するはずだ。そう考えると、1590人の大半に再就職の確約があった、つまり「裏下り」が横行していたと考えるのが普通だ。

 資源エネルギー庁長官を'10年8月に退官した経産省OBが、半年も経たずに東京電力顧問に就任した例もあった。自公政権下では、こうした前職との密接な関係先への再就職は、一度別の企業や組織に就職してワンクッションおいていたのだが、民主党政権下では直接的で露骨な「天下り」になった。それでも民主党は、これを「天下り」ではないと言い張ってきた。

 ところが、福島第1原発事故が起こり、東電と経産省との間に「規制の虜」関係があることが明らかになった。規制される側の東電が規制する側の経産省から天下りを受け入れることで経産省を取り込み、規制を歪めてしまう癒着関係が存在していたことが、国民の目にさらされたわけだ。

 これほどまでにデタラメぶりが露になれば、いくら厚顔無恥な民主党でも監視委を活用せざるを得なくなった、ということなのだろう。経緯はどうあれ、天下り根絶に一歩でも近づくのなら、意味はある。

「週刊現代」2012年3月24日号より


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