[陸上]白戸太朗「福士加代子の挑戦は続く」

 2月末、私は「東京マラソンEXPO」でのトークショーを前に少々緊張していた。マラソンや自転車界では多くの方とこのような舞台に立ってきたのだから、それほど緊張することはないのだが、今回はちょっと勝手が違ったのだ。この日のお相手は福士加代子選手。彼女にとっては、失速して9位に終わった1月の大阪国際女子マラソン以来、初めての公の場なのだ。どのくらいのトーンで、どの程度の話までしていいのか……。しかし、控室に入ってきた彼女は予想以上に明るい声で「あっ、なんでもOKっすよ。だって隠すことないもん!」とあっけらかん。いつもの福士選手が戻っているのに拍子抜けした。

 今回はリベンジのマラソンだった。注目を集めた08年1月の大阪国際女子マラソンでも、トップを快走するも、30キロ過ぎで大きくブレーキ。最後は転倒しながらゴールするシーンは痛々しかった。華やかな陸上キャリアを持つ彼女にとって、屈辱の大会に再度チャレンジするというのは相当な決意が必要だろう。そこまでの決意をして挑んだ今回のレースだったが、またもや失速。その心中は計り知れない落胆があったに違いない。

準備にあった大阪の敗因

「う~ん、前回は本当に準備不足でマラソンをなめてましたから、失敗は当然ですね。でも今回はねぇ……」と前回との違いを説明する福士選手。
「いい感じで練習はできていたんです。レースもいけるんじゃないかと。前半も無理しないで自重したのに、25キロを過ぎて重友(梨佐)さんがスッとペースを上げた時に動けない自分がいたのには驚きました。そこまで抑えていったので、“さぁこれから”くらいの感じだったのに、身体が動かなかった」。彼女の中でも想定外のブレーキだった。いったい何が原因だったのか?

「40キロ走を何度もこなし、距離に対する不安もなかった。やはりエネルギー不足だったのかと……」。そこで、同席されていた増田明美さんから「福士さん、トラック種目の感覚で調整したんじゃない? マラソンはスタート時に身体が重く感じるくらいでなければだめよ」という鋭い指摘が入った。

「そうなんですよね。気を付けているつもりだったのですが、どうしてもトラックの感覚が抜けないんです。また、昨年のシカゴマラソンでは食べすぎて、途中でお腹が痛くなったという経験もあったので、自然に抑えて行ったのかもしれません。だから最初は身体が軽かったのに、途中で動かなくなってしまったのかも。確かに、重友さんは最初重そうだったけど、走っている最中に絞れていくような感じがありました。先行された時に“(重友さんは)いい感じだな”って思いましたもん」。マラソンに向けての練習は上手くできたものの、最終調整に微妙な狂いがあったようだ。