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あえていう、シャープの「定期昇給凍結」は英断だ!シロアリ化したホワイトカラーの「既得権益」をぶちこわさなくては日本のメーカは国際競争に勝てない

 3月14日は春闘の一斉回答日だったが、シャープが定期昇給を凍結することを決めた。シャープは液晶テレビの値崩れなどから業績が悪化し、2012年3月期に過去最大となる2900億円の最終赤字を計上することが賃上げ抑制の背景にある。

同日、シャープは片山幹雄代表取締役社長(54)が代表権のない会長に、町田勝彦代表取締役会長が相談役に退くトップ人事も発表。奥田隆司常務執行役員(58)が社長に昇格する。2007年に異例の抜擢によって40代で社長に起用され、堺工場新設など大型液晶路線を引っ張ってきた片山氏は責任を取る形で代表権を返上する。

薄型テレビ事業への過剰投資など経営判断のミスによって同じく過去最大の7800億円もの最終赤字を見込むパナソニックは定期昇給を維持する方針だ。「事業立て直しに向けて士気向上につなげる考え」(3月14日付日本経済新聞)とある。

連合会長はパナソニック労組出身 

 春闘が風化しつつある中で、読者の中には定期昇給(定昇)とベースアップ(ベア)の違いが分からない人もいるかもしれないで、少し解説する。

定昇とは、今年29歳の人の月給が30万円で、30歳の人が31万円の場合、29歳の人は来年の月給が31万円になることを意味する。単純化していうと1年歳をとれば必ず賃金が上がる制度であり、「賃金(の上昇)カーブ維持」と表現されることもある。

ベアは「賃金改善」とも呼ばれ、これも平たく言えば月給の底上げのことで、29歳の月給が31万円になり、30歳の月給が32万円になるイメージだ。

シャープやパナソニックの労組が属する電機連合は、今年の春闘の方針として、ベア要求は見送り、定昇維持と一時金(ボーナス)積み上げに絞った労使交渉を目指してきたわけだが、シャープはその方針から脱落したことになる。

しかし筆者はシャープの判断を高く評価し、パナソニックの判断には疑問を呈したい。シャープが定昇を凍結させることは英断である。シャープが過去最大の赤字を出す要因は、主力事業が構造的問題を抱え不採算に陥ったからだ。経営危機の局面にあると言っても過言ではなく、こうした中で労務コストを抑える判断は当然のことだと思う。危機感を醸成するためにも必要な対応策ではないか。シャープクラスの賃金をもらっていれば、今すぐ生活に困ることはない。業績が復活した際に、労使が話し合い、元に戻せばいい話である。

 これに対してパナソニックも本家本元のテレビ事業が極度の不振という同様の状況にありながら定昇を実施する。しかも、来期以降、売り上げが伸びるような展望が開けているわけでもない。いくら「士気向上につなげる」と言っても、定昇実施は労使の上層部に危機感が欠如していると受け止められても仕方ない。

労組の最上部組織である連合の古賀伸明会長はパナソニック労組出身で、連合は政権与党民主党の「最大スポンサー」のひとつである。しかも古賀氏は電機連合委員長を経て連合会長に就任している。うがった見方をすれば、パナソニック労使がこうした諸事情に配慮したとすれば、やはり危機感の欠如と言えるだろう。

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