企業・経営
合理性を超えた戦略を成功させるのは志と信念である マントラを掲げよ 第1回
波頭亮「成功する人のエクセレント・マインド ジョブズはなぜ成功したのか」 

 

勝ち組企業の必要条件

波頭 亮 氏

 21世紀の世界の勝ち組企業の1社といえば、迷わず米国のアップルをあげる。同社が携帯音楽プレーヤーの初代iPodを発表したのは2001年。03年には、音楽配信サービスを開始した。iTunes Storeで購入した楽曲をiTunes という専用ソフトでパソコンにダウンロードする。これをiPodに取り込んで、気軽に自分の好きな音楽を持ち歩くスタイルを定着させた。

 それまでの常識でいえば、ハードメーカーは携帯音楽プレーヤーを売り、音楽配信は著作権を持つレコード会社と考える。実は、ソニーはアップルに先立ち、1999年に音楽配信対応のウォークマンを発売している。だが、音楽配信にまで乗り出すことはなかった。それが常識だったからだ。

 アップルは、そんな常識を覆した。「果たしてそんなことができるのか?」という非常識な課題に果敢に挑戦し、見事にこれを達成して新しい常識をつくりだした。これは21世紀の勝ち組企業に総じていえる特徴で、グーグルやアマゾン然り。非常識なレベルで成功を求めようとするのであれば、普通のことを普通の範囲で合理的にやっていたのではまず無理だ。どんなに立派な経営戦略を打ち立てたとしても、中身が常識的なレベルであるかぎり、普通の企業の群れの中から抜け出すことはできないのである。

戦略と組織の関係が変わってきた

『マントラを掲げよ
信念を戦略に変える力』

著者:正木 静修
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 経営戦略が、企業の発展や業績に直結するようになったのは80年代からだ。

 それ以前は大量生産・大量消費型の企業オペレーションを滞りなく完了させるために、管理と改善によって経営効率を高めることに重きを置き、それが競争の軸となっていた。しかし、80年代に入り、そうした企業経営では競争に勝てなくなった。

 当時、盛んに「戦略の時代」の始まりといわれ、80年に出版されたマイケル・ポーターの『競争の戦略』やフィリップ・コトラーの『マーケティング原理』といったビジネス書が注目された。事業をどう展開するか。どんな製品を出して、どうやって競争相手の裏をかくか。どう差別化するか。目標達成のための綿密な製品戦略や事業戦略が、企業の勝敗を決めることになったのである。