世界経済
ギリシャがデフォルト---懸念されるポルトガル等への波及
〔PHOTO〕gettyimages

 3月9日、長期間に亘って動向が注目されたギリシャの債務再編の行方が、ようやく明らかになった。ギリシャ向け債権を保有する債権者の83.5%は自発的な債務の大幅削減に賛同し、それに基づいて同国は集団行動条項(CAC=コレクティブ・アクション・クローズ)が発動した。集団行動条項とは、大多数の債権者が債務削減案に賛同すると、反対を主張する少数債権者も強制的に当該案に従わせる手法だ。

 今回の集団行動条項の発動によって、金融派生商品の取引慣行などを決める国際金融団体(ISDA)は、ギリシャ向け債権にデフォルトが発生したと判断した。これによって、当初懸念された無秩序なデフォルトに陥ることは避けられたものの、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ=一種の保険に相当)に係る支払い義務が発生する。

 いまのところ、CDSに係る混乱は見られず、金融市場の動向も落ち着いている。今後の最大の問題は、ギリシャのデフォルトの連想が、ポルトガルやスペインに及ぶことが懸念されることだ。当面、ユーロ圏の信用不安問題の解決にはほど遠い情況が続くと見られ、「ユーロ問題が片付いた」と見るのは尚早だ。

 ギリシャの財政問題が表面化したのは、リーマンショック後の2009年10月であった。今回の債務再編会議の結果、ギリシャが負う約3500億ユーロの内、その3分の1が軽減されることになる。ただ、それでも、ギリシャの財政再建には疑問符が付く。ギリシャ経済は5年連続マイナス成長がほぼ確実で、財政再建に必要な税収を上げることが難しいからだ。

ユーロ圏経済の後退が世界を揺るがす

 財政悪化の問題はギリシャだけに留まらない。今回のギリシャの事実上のデフォルトによって、ポルトガルやスペイン、さらにはイタリアにまで、同様の流れが波及することが懸念される。スペイン、イタリアでは改革がそれなりに進んでいるものの、今後、それらの国が、自国の債務を有効に管理することができるのか否かには疑問が残る。

 現在、ユーロ圏諸国が行っている支援策は、基本的には時間稼ぎに過ぎない。時間を稼いでいる間に、問題を抱えた南欧諸国が問題解決に向けて本格的に取り組めるか否かが最大のポイントになる。

 2008年のリーマンショック以降、世界経済は長く緩慢な景気回復の中にある。しかし、先行き不透明感は依然として根強い。足許では、米国の堅調な経済指標や主要中銀の流動性供給を受けて株高が進んでいるものの、まだその足取りは心もとない。そうした状況下、ユーロ圏の信用不安問題が再燃するようなことがあると、世界経済の回復基調の足を引っ張ることが懸念される。ユーロ圏の問題は、依然として世界経済が抱える最大のリスクファクターであることは間違いない。 

 ユーロ圏の債務問題はギリシャやポルトガルなど、個々の国レベルでの問題にとどまらない。ユーロ圏の盟主であるドイツの経済は堅調な展開を示し始めており、再び上昇傾向を歩むことが期待できる一方、ギリシャ、ポルトガル等の諸国はマイナス成長が続くとみられる。ユーロ圏諸国間の経済格差は一段と拡大する。それに伴い、単一通貨であるユーロの持続可能性に対する懸念も高まるだろう。

 またユーロ圏経済の後退が続くと、同地域を最大の輸出先としている中国経済にもマイナスの影響が及ぶ。中国の今年2月の貿易収支が赤字に落ち込んだことを見ても、そうした悪影響が顕在化していることが分る。リーマンショック以降、世界経済を下支えしてきた中国経済に暗い影が及ぶことは、わが国をはじめ世界経済に大きな痛手になることが懸念される。ユーロ圏の問題を過小評価することはできない。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
1953年神奈川県生まれ。76年一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行入行。ロンドン大大学院修了。メリルリンチ社ニューヨーク本社出向、みずほ総研主席研究員などを経て、05年信州大学経済学部教授。07年行動経済学会常任理事、10年FP協会評議委員などを務める。 主要著書等:「日本がギリシャになる日」(ビジネス社)、「行動経済学入門」(ダイヤモンド社)、「実戦 行動ファイナンス入門」(アスキー新書)、「下流にならない生き方」(講談社)、「ファイナンス理論の新展開」(共著、日本評論社)、「行動ファイナンスの実践」(監訳、ダイヤモンド社)、「国債と金利をめぐる300年史-英国・米国・日本の国債管理政策」(東洋経済新報社) 、「はじめての金融工学」(講談社現代新書)、「日本テクニカル分析大全」(共著、日本経済新聞社)、「リスクマネーチェンジ」(共著、東洋経済新報社)、「最強のファイナンス理論-心理学が解くマーケットの謎」(講談社)、「行動ファイナンス」(監訳、ダイヤモンド社)
この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら