厚労省、喫煙率の4割減目指す
「がん対策」で初めて数値目標を設定[たばこ]

 厚生労働省は12年度から実施する次期「がん対策推進基本計画」に初めて喫煙率の数値目標を盛り込む。日本人の死因トップのがんを減らすため、22年度までに成人の喫煙率(男女合計)を現状の19・5%から約4割減らし12・2%にする方針だ。各省との協議などを経て6月までの閣議決定を目指すが、日本たばこ産業(JT)などのメーカーは「吸う、吸わないは個々人が判断すべきもの」と数値目標の設定に反対している。

 厚労省が喫煙率の数値目標を「がん対策推進基本計画」に初めて盛り込むことにしたのは、10年10月のたばこ税の引き上げにより喫煙率が減少した事実と、たばこをやめたいと考えている人が多いという調査結果があるためだ。

 この時のたばこ税の引き上げは1本当たり3・5円という大幅なもので、主要銘柄のマイルドセブンは1箱(20本入り)が300円から410円になった。値上げ幅は36・7%。セブンスターでは46・7%の値上げで440円となった。たばこ税の引き上げは06年と03年にも実施されているが、いずれも1本1円の値上げだったため、1箱20~30円程度の値上げにとどまっていた。

 同省の「国民健康・栄養調査」によると、たばこ税引き上げ直後の10年11月の成人の喫煙率は男性が32・2%、女性が8・4%で、男性では前年を6ポイント、女性は2・5ポイント下回った。全体の喫煙率は19・5%で調査を始めてから初めて2割を下回った。

 喫煙率は03年に27・7%(男性46・8%、女性11・3%)だったものが、年々低下してきたが、10年10月のたばこ税の大幅引き上げをきっかけに大きく下がり、習慣的喫煙者の中でもたばこをやめたいと思っている人が、男性で35・9%、女性で43・6%に達し、全体で37・6%と過去最高になっていることが分かった。

喫煙による死者年間12万人

 同省によると、喫煙はがん、循環器疾患、糖尿病などさまざまな疾病の原因となることが科学的知見として確立されており、10年に亡くなった日本人119万人のうち、本人の喫煙による死亡者数は12万~13万人と推計されている。05年に発効した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」でもたばこの使用を減少させることがうたわれており、次期がん対策推進基本計画に成人の喫煙率低下に関する目標を設定し、必要な対策を推進することが必要としている。

 07年に策定された「がん対策推進基本計画」では「喫煙をやめたい人に対する禁煙支援を行っていく」ことが閣議決定されていることから、現状の19・5%の喫煙者のうち、「たばこをやめたい」と思っている人(37・6%)全員が禁煙した場合を目標に、22年度の喫煙率を現状より4割少ない12・2%を目指す。未成年者は法律上禁止されているうえ、未成年期からの喫煙は健康への影響が大きいことから、ゼロを目標にする。

 非喫煙者が喫煙者の煙を吸ってしまう受動喫煙についても、数値目標を定めて減少を目指す。国民健康・栄養調査では、飲食店での受動喫煙の機会は「ほぼ毎日」「週に1~数回程度」「月に1回程度」と答えた非喫煙者が50・1%に達していた。家庭では「ほぼ毎日」という非喫煙者が10・7%に上った。

 同省は、飲食店では中小規模の事業所が多く一律に禁煙を事業者に求めることは困難で、家庭で完全な受動喫煙防止を求められないことから、受動喫煙の機会の半減を目標とする。具体的には「たばこをやめたい」と思っている人が全て禁煙した場合の受動喫煙率の半分(飲食店で15%、家庭で3%)を数値目標とする。また、行政機関や医療機関での受動喫煙はゼロとする。

 07年に策定された初のがん対策推進基本計画では、「喫煙率の半減」を盛り込もうとしたが、たばこ業界の強い反発を受け、政府が見送った経緯がある。今回もJTは「肺がんの死亡率と喫煙者率との間に明らかな相関関係があるとはいえない。たばこは合法的な嗜好品で、吸うか、吸わないかは個々人が判断すべきもので国が数値目標を設定することは問題だ」との見解を示しているが、喫煙者の激減の事実の前に主張はしぼみがちだ。

 昨年、小宮山洋子厚労相は健康を守るため「たばこ税を引き上げて1箱700円程度にすべきだ」と発言して物議をかもしたが、たばこが値上がりすれば喫煙者は減るという結果がはっきり出ており、今後さらなるたばこ税の引き上げが日程に上ってきそうだ。

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