東大、秋入学へ全面移行を検討
国際化に対応、他大学も同調の動き[大学]

 東京大学はこのほど、春入学を廃止し秋入学への全面移行を検討する方針を明らかにした。国際的な標準に合わせて海外留学を促進する一方で優秀な留学生を受け入れやすくするグローバル化への対応策で、5年前後をめどに実現を目指すという。他の国立大や有名私大との協議会を働きかけ具体的な動きが広がっている。しかし、入学前の半年間の〝ギャップターム〟の過ごし方や官民の就職や公的資格試験の時期、さらに経済的負担増などクリアすべき課題は多い。

 東大の「入学時期の在り方に関する懇談会」(座長・清水孝雄副学長)は昨年4月から国際的に主流となっている秋入学の検討を進めており、その中間報告を今年1月20日に公表した。

 それによると、東大が10年3月に策定した「行動シナリオ」で示した「よりグローバルに、よりタフに」学生を育成するために、(1)学部段階の秋入学への全面移行(大学院段階は引き続き検討)(2)4月から約半年間のギャップタームを設定(3)大学院教育への早期のアクセスを可能化――とする教育システムの改革が必要とした。

 ギャップタームでは、ボランティアなど社会貢献活動や海外経験、インターンシップなどの勤労経験、研究の現場に接する体験など、さまざまな体験を支援する仕組みを作り、「受験勉強のアカを落とす」時期として有効に活用することを提言している。

 東大が入学時期を変更するという大胆な改革を提起した背景には、社会・経済のグローバル化の急速な進展の中で、このままでは人材育成の社会的要請や大学の国際競争に対応できないという危機意識がある。特に国際競争の面では、英国の高等教育専門誌が昨年10月に発表した世界大学ランキングで、米ハーバード大や英オックスフォード大など欧米の大学が上位を占める中、日本を代表する東大は30位と振るわない。ランクアップには留学生や外国人教員の比率上昇などが不可欠という。

 長引く不況と将来への不安が募っていることを反映して日本の若者の「内向き」志向が指摘されているが、東大の学生も例外ではない。中間報告によると、11年5月現在で海外留学は、学部生が53人で全体の0・4%、大学院生が286人で同2・1%と低迷している。留学生の受け入れは、学部で276人(1・9%)、大学院が2690人(18・6%)。大学院ではすでに10月入学を導入しているため高くなっている。

 留学の阻害要因について学部4年生に聞いたアンケートでは、「大学の年間スケジュールや大学院・就職試験」が40%と最も多く、「経済的な問題」31%、「語学力の問題」23%となっている。

 記者会見した浜田純一学長は「(入学の)学事日程の国際的な調整だけで、留学生が爆発的に増えるとは考えていない。奨学金や生活インフラの整備、カリキュラムの整備や社会的環境などいろいろな条件を整えていく必要がある」と述べた。その上で「秋入学は、学事日程の調整というテクニカルな話だけではなく、大学全体や社会の国際化を加速する」と、その意義を強調した。

4月にも12大学の協議会

 浜田学長は記者会見で、北海道、東北、筑波、東京工業、一橋、慶応、早稲田、名古屋、京都、大阪、九州の11大学には中間報告の内容を説明しており、4月をめどに協議会を立ち上げる意向を示した。慶応大などとはすでにギャップタームの活用方法について意見交換を進めていることを明らかにした。

 同学長は、秋入学の実現には5年前後をめどとし、最初の2年間で条件整備を他大学や経済界と議論し、残り3年間を周知と調整の期間に充てたいという考えだ。

 中間報告は秋入学への移行に関する課題として、(1)家計負担の増大(2)春卒業を想定している現在の就職や資格試験などの仕組みとの関係(3)ギャップタームにおける身分の在り方---などを挙げている。経済界とは、採用時期・方法の見直しやギャップタームの受け皿づくりなどついて協議する。

 政府関係でも、医師国家試験や司法試験などの公的資格試験の在り方や官公庁の採用時期などの調整が必要になる。藤村修官房長官は1月27日の各府省連絡会議で、東大などが検討している秋入学への移行問題について検討課題を整理するよう各府省の事務次官に指示した。

 東大から協議会設置を呼び掛けられた大学は、おおむね前向きに検討していく意向だ。東北大の井上明久学長は毎日新聞の取材に対し「世界の7割以上が秋入学だ。東大主導というより東北大が主体的に考えていきたい。今後約1年で中間報告をまとめたい」と話した。清家篤・慶応義塾塾長は「(秋入学の)必要性や課題についても東大と問題意識を共有する部分も多い」という。

 一方、一橋大は、春入学を維持しつつ、本格的な授業開始は秋に変える改革案を検討している。今後、協議会の議論に影響を与えそうだ。

  日本の大学はもともと9月入学だったが、1921年に会計年度に合わせて4月入学に変更された経緯がある。国際化の進展から秋入学への関心が高まり、07年の政府の教育再生会議が9月入学の大幅な促進を提言した。文部科学省によると、09年度に学部段階で245大学が4月以外の入学を認め、2226人が入学しているが、帰国生徒や留学生の受け入れが中心だ。

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