谷垣・小沢がにらみ合ったまま膠着状態に。野田首相が固執する 「増税・解散」は時間切れの可能性

 野田佳彦首相が消費税引き上げを実現する道はあるだろうか。それは衆院解散・総選挙のシナリオとも密接に絡んでいる。鍵を握る野田と自民党の谷垣禎一総裁、それに民主党の小沢一郎元代表の立場をあらためて整理しておきたい。

 言うまでもなく、野田の最重要目標は消費税引き上げだ。衆院解散・総選挙はどうかといえば「できれば避けたい」のが本音だろう。

 内閣支持率が低迷する中、いま総選挙をすれば、民主党の敗北はほぼ確実だ。そうなれば、民主党内で求心力を失い首相続投すら危うくなる。消費税引き上げが実現したところで、増税は選挙でプラスに働くよりは、マイナスに働く可能性のほうが大きい。下手をすれば、敗北を招いた「戦犯」になってしまう。

 野田が解散に傾けば、徴候は事前に漏れるので、党内から「解散反対」の大合唱が起きるだろう。民主党はもともと選挙基盤が固まっていない新人議員が多い。解散に反対している小沢グループだけでなく、落選を恐れる新人、若手議員がまとまって「野田降ろし」に動く可能性もある。

 解散にこぎ着ける前に、倒閣含みの激しい党内政局になるのは避けられない。少なくとも閣僚4,5人のクビを切って自ら兼務するくらいの覚悟で臨まなければ、内閣として解散詔書に署名するまでに至らないだろう。

 つまり、野田にとって「増税ができなければ解散」という選択肢はハードルが相当高い。せいぜい党内を引き締めるためのブラフ(脅し)として使えるくらいだ。それも何度も繰り返せば、底が見えてしまう。

解散なら谷垣落選の可能性も

谷垣はどうか。

 谷垣の最優先目標は野田政権を解散・総選挙に追い込むことだ。谷垣は党首討論で「解散・総選挙に踏み切れば、協力する道は開ける」と野田に迫った。谷垣にとって、ベストシナリオは「まず解散。そのうえで増税派が新たな連立政権を樹立して増税実現」という話である。

 ところが、この「先に解散して後から増税」という話は現実味がない。国民は政策を実現してもらうために議員を選んでいるのだ。「解散すれば増税に賛成します」と言うなら、なぜ議員バッジをつけている、いまから増税に賛成しないのか。

 国会議員が実現したい政策があるなら、なにもいったん辞めずに、さっさと増税法案に賛成すればいい話である。国民からみれば、解散・総選挙という手続きを踏むだけ、時間と費用の無駄である。べつに野田だろうが谷垣だろうが、いいと思う政策をしてくれれば国民はどっちでもいいのだ。谷垣の言い分は結局、党利党略という話である。

 それに、そもそも自分の当選を前提に話をするのはおかしくないか。いくら谷垣とはいえ、国民の審判を受けてみたら落選という可能性だってある。

そうなったら、谷垣は議員バッジをつけているときに政策実現に汗を欠かなかっただけでなく、自分が求めて解散させてみたら、仕事をしようにも国民に任せてもらえなかったという話になる。バッジがあるときに仕事をするのが国会議員ではないか。

 こういう訳のわからない話が出てくるあたりに、永田町の屁理屈と国民の願いがかけ離れている、と実感する。

そこで順番を入れ替えて「先に増税に賛成するから、後で必ず解散せよ」という話になる。話し合い解散だ。だが「増税に賛成する」というハードルが低くない。それでは肝心かなめの解散・総選挙に本当になるかどうか分からず、野田に増税賛成だけ食い逃げされる可能性が残るからだ。

 谷垣は野田に小沢排除も求めている。それは先週のコラム『焦った増税派の「極秘トップ会談」ではっきりした野田、谷垣、そして小沢「三すくみの構図」』で指摘したように、小沢が最後の瞬間に野田と手を握ってしまう可能性を捨てきれないからだ。もしも小沢と野田の妥協が成立してしまうと、谷垣自民党が増税賛成に転じたところで、野田にとって「谷垣のありがたみ」は半減してしまう。

 そうなると仮に解散・総選挙をしてみたところで、目指す自民・民主の増税大連立の話もあやしくなる。それどころか谷垣にとっては「単に野田の延命に手を貸しただけ」という結果になって、目も当てられなくなってしまう。解散・総選挙どころではなく、谷垣の大敗北である。

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