「実質国有化」へぎりぎりの綱引き
3月末に経営改革の「総合特別事業計画」策定[東京電力]

枝野幸男経済産業相(右端)との会談終了間際に言葉を交わす西沢俊夫東京電力社長(左端)=経産省で2月13日

 東京電力の経営権をめぐる政府と東電との攻防が、大詰めを迎えている。福島第1原発事故をきっかけに経営が悪化した東電にとって、公的資金による資本増強は不可欠といえる。ところが、東電を実質国有化し、電力制度改革につなげたい政府に対し、東電は民間企業としての独立性堅持を掲げて抵抗している。東電の経営改革策を定める「総合特別事業計画」の策定期限は3月末。綱引きの決着はぎりぎりまでもつれそうだ。

 総合特別事業計画は、政府の原子力損害賠償支援機構と東電が共同で作り、枝野幸男経済産業相の認定を受けなければならない。東電はこの計画に基づいて、国から原発事故被害者に対する賠償資金の支援や公的資金による出資を受けることになる。

 東電が2月13日に発表した11年4~12月決算は、約6200億円の最終赤字だった。原発停止に伴い火力発電所の稼働率を上げたことによる燃料費の負担増などが大きな原因だ。

 今後は、廃炉費用などが一段の経営圧迫要因になり、13年3月期に債務超過に陥る可能性があるため、政府は1兆円規模の公的資本注入を検討している。

 ところが、その前提になる総合特別事業計画の認定権限を握る枝野経産相は、東電の経営体質に根強い不信感を抱いている。「新生東電に生まれ変わろうという意思が全く示せていない、というのが私の今の評価だ」。2月10日の会見で、強い口調で東電を批判した。

 政府の賠償資金支援を受けながら、賠償支払いが迅速に進まないことや、西沢俊夫社長が企業向け電気料金の値上げを唐突に発表したうえ、「値上げは事業者の権利だ」と言及したことなどが背景にある。

 枝野経産相は2月13日に西沢社長と会談し、「資本注入額に照らし、十分な議決権を伴わない形で資本注入を求める総合計画が提出されても、認定するつもりは全くない」と強調した。

「3分の2以上議決権を」経産相

 経産相は、3分の2以上の議決権比率獲得を視野に入れ、少なくとも過半数を獲得して、東電の経営体質一新を目指している。

 東電の時価総額は約3200億円だから、さらに1兆円規模を議決権のある株式で出資すれば、議決権全体の4分の3まで政府が握れる計算になる。

 総議決権の3分の2以上を持てば、株主総会での特別決議が可能になるため、合併や事業譲渡、定款変更といった重要事項を政府だけで決められる。過半数でも経営者の選任・解任が可能になる。政府の意向に沿った役員をそろえることで、実質的に経営権を握れるわけだ。

 経産相側には、電力業界で圧倒的な存在感がある東電を実質支配することにより、同業界内で反発の強い「発送電分離」をはじめとした電力制度改革につなげたいとの思惑もある。

 一方東電は、民間企業としての独立性維持を主張し、政府が半数以上の議決権を持つことに強く抵抗している。当初は政府の議決権取得そのものに反発してきたが、債務超過が現実味を増す中で「(重要事項に拒否権を行使できる議決権の)3分の1超の受け入れはやむを得ない」(東電首脳)との方針に転じた。それでも「国の出資が50%未満なら国有化でなく、国の資本参加ということだ」(幹部)などと、「国有化」に抵抗する姿勢は強い。

 経営権を失うことで、既に辞任の意向を固めている勝俣恒久会長に加え、原発事故後に就任した西沢社長の辞任を迫られることや、組織が解体されることへの懸念も大きいようだ。

 西沢社長は経産相から示された「注入額に見合う十分な議決権」という条件に関し、「大臣の考えもよく考慮しながら議論していく」と述べるにとどまり、慎重な姿勢を崩していない。

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