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もはや誰にも分からない
消費税増税って、結局どうなんの?

「もう、どーでもいいや」と投げやり状態?〔PHOTO〕gettyimages

「ここ最近、野田総理の疲れはピークに達していて、周囲は相当気を使っていますね。最側近の一人・手塚仁雄首相補佐官は、酒好きの総理を元気付けようと、わざわざ『黒龍』や『十四代』といった銘酒を取り寄せてプレゼントして〝精神衛生管理〟に努めているような状況です」(民主党ベテラン秘書)

 総理が頭を痛めていること、それは言うまでもなく「消費税増税法案の行方」についてである。

 2月24日、アメリカの大手格付け会社「ムーディーズ・インベスターズ・サービス」の日本国債担当アナリストであるトーマス・バーン氏が緊急来日。「今国会で消費増税の進展が見られなければ、日本国債の格付け見通しを、現在の『安定的』から『弱含み』に変更する可能性が高いでしょう」と発言し、日本国債の安定性について、厳しい見通しを示した。

 昨年のG20サミットで消費増税を「国際公約」として掲げた野田総理に対して、「それを破れば、日本の信用は一気に急降下する」と改めて釘を刺したわけだ。

 一橋大学准教授の小黒一正氏も、「今年消費税増税に失敗すれば、日本は手痛いダメージを負うことになる」と指摘する。

「日本の財政は大変厳しい状態で、消費税を10%に上げても、財源は足りません。内閣府の試算では、2015年までに消費税を10%に引き上げて一時的に財政赤字が縮少しても、経済成長率が1%台なら、2020年からはまた赤字幅が大きくなっていきます。それも17兆~18兆円の赤字です。それをすべて消費税で埋めようとすると、税率を16~17%程度に上げなければなりません。そんな状況ですから、増税を先送りすればするほど、若い世代や将来世代が背負う最終的な負担はますます大きなものになっていくのです」

 消費税増税は総理と財務省にとっての悲願であり、野田政権発足以来、彼らは増税法案の成立に心血を注いできた。増税の骨子は昨年12月29日に民主党内でまとめられ、このとき野田総理は安堵のため息をもらしたはず。ところが、ここにきて法案の成立が危ぶまれているのだから、総理の心中は穏やかでない。全国紙政治部記者が解説する。

「自民党をはじめとする野党が反対しているのはもちろんのこと、小沢一郎元代表を筆頭とする民主党内の〝反増税派〟が、『いま増税すると経済がさらに悪化する』と消費税法案に反対し出した。さらには連立を組んでいる国民新党まで消費増税に反対、と言い始めた。小沢派は、野田総理が無理にでも法案を提出すれば離党もありうるという姿勢をみせ、野田総理に揺さぶりをかけています」

 成立まであと少しのところで、越えなければいけないハードルがいくつも出現。野田総理が焦燥にかられているのも、無理はない。

 いったい消費増税法案は通るのか、通らないのか。実はその見通しを描けている人間は、民主党内にも一人としていない。

「今国会で消費増税法案が通らなければ、野田さんはおそらく『継続審議』するとして、次の国会での成立を目指し、もう少し踏ん張るのでは」(森山浩行議員)

「法案が通らなければ、野田さんは『今回は時期尚早だった』と言って、増税案を引っ込めるでしょう。もし強行突破すれば、小沢元代表らの分党もあり得ると思う」(吉田公一議員)

「経済学者やエコノミストなどの7割が増税の必要を唱えているので、増税は不可避」(田村謙治議員)

「小沢さんもいろいろな揺さぶりをかけていますが、代表を経験した人がそう簡単に『党を割る』ことは考えないと思います。仮に党を割ったり、代表が変わったりして小沢さんが政権の主導権を握る立場になったとしても、どのみち今後消費税増税は避けられない」(田中慶秋議員)

 このように、議員によってもその見解はまちまちだが、

(1)期限までに小沢派を説得する
(2)不成立は折り込み済みで、次期国会での成立を目指す
(3)ゴリ押しで法案を出して小沢一派が離党、野田総理は辞職を余儀なくされる

 ---大枠でくくれば、民主党議員の考えは三つに大別できる。ここで共通しているのは、「消費増税法案が通らなくても、20%台の低支持率状態では、野田総理は解散総選挙には打って出られないだろう」という認識だ。

話し合い解散?5・20投票?

 ところが、財務省はまったく違うシナリオを描いている。増税を押し進めたい財務省は、この危機的状況を打破するには、解散しかないと考えているようだ。財務省のキャリア官僚が説明する。

「衆参ねじれの状況で、簡単に増税が実現できないことは百も承知。ただ、野田政権で消費増税が叶わなければ、次の政権が消費増税に動くとは限らない。だから、野田総理には政権の座にしがみついてもらう。そこでたどり着くのが、早期解散して、反対派に準備をする時間を与えないまま選挙に持ち込むという戦略だ。野田総理が強引にでも、3月中旬に消費増税法案を閣議決定する。当然自民党は反発し、野田総理の問責決議案を出す。4月中旬の国会で問責が通れば、野田総理は総辞職か解散総選挙かの選択を迫られる。そこで、小泉元首相の『郵政解散』よろしく『消費増税で国民に信を問う!』と言って『消費税解散』を行う、ということだ」

 実際、野田内閣は3月に入ってから、選挙対策を急ピッチで進めている。樽床伸二議員と高木義明選挙対策委員長が、民主党の新人を呼び出し、「消費税選挙」の戦い方をじきじきに指南しているという。

「少なくとも2回は、地元の小学校などで対話集会を行い、消費税について説明しなさいといわれました。『こんな質問が出たら、こう返す』という〝想定問答集〟までつくっていましたよ」(民主党の1回生議員)

 財務省は選挙の日程まで想定しているという話も。

「4月中旬に問責を通して、5月20日に投開票。これが財務省の描くベストシナリオ。この時期なら民主党にとって脅威となる大阪維新の会もロクな候補者を擁立できないし、もし小沢派が造反していても、選挙の準備に十分な時間をかけられないだろう」(前出・財務省キャリア官僚)

 さらに、ここに来て急浮上したのが、自民党に消費増税法案成立に協力してもらうかわりに、成立後すぐに解散総選挙を行うという「話し合い解散」だ。

「2月25日に、野田総理と自民党総裁の谷垣氏が極秘会談を行い、『話し合い解散』への道筋をつくったのではないかと言われています。安倍晋三元総理などもこの路線を支持しており、『話し合い解散だと5月選挙になる。いまのうちに気を引き締めておけ』と周囲に呼びかけているので、ますます現実味を帯びてきた」(前出・政治部記者)

 財務省を含め、さまざまな勢力が消費税を巡る「頭の体操」に精を出しているが、現状では誰もその答えを出せていない。政策研究大学院大学の増山幹高教授は、「出たとこ勝負---その程度の感覚で政治を考えているのではないか」と厳しい指摘をする。

「鳩山・菅時代の民主党はまだ〝仮免許〟状態だったから、『決められない政治』も仕方がない部分があった。しかし、3つ目の民主党内閣でまた重要案件の成立にしくじったら、有権者の失望はピークに達するでしょう。民主党はそのことを分かっているのか」

 有権者が愛想を尽かすまでのタイムリミットは、刻一刻と近づいている。

「週刊現代」2012年3月17日号より

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