中国の成長目標7.5%に引き下げ=安定成長路線に転換のきっかけ?
〔PHOTO〕gettyimages

 3月5日、中国の第5回全国人民代表会議で温家宝首相は、2012年の中国の経済成長目標を7.5%とすることを発表した。7.5%という成長率自体は決して低い水準ではないが、つい最近まで二けた成長を達成してきた中国としては、低い成長目標を設定したとの印象が強い。

 今回の成長目標の引き下げの背景には、足元で中国経済の問題点が顕在化していることがある。今まで高い成長を達成してきたのだが、沿岸部と内陸の農村部の貧富の差が拡大したことに加えて、大規模な不動産バブルの発生や地方政府官僚の汚職など、高成長に伴う経済のひずみが目立っている。今年は、リーダーが胡錦濤から習近平に代わる時期であることを勘案して、安定成長への舵を切ることを考えたのだろう。

 問題は、リーマンショック以降の欧米諸国の景気低迷の時期、世界経済を下支えしてきた中国経済が大きく減速するようなことがあると、世界全体の景気の足を引っ張ることが懸念されることだ。中国は様々な経済問題を抱えているだけに、今後の動向からは目が離せない。

"先富主義"の弊害が顕在化

 中国は、1970年代後半、鄧小平の経済発展を目指した"改革開放路線"によって、先に成長の条件を満たしたところから経済的な富を手に入れ、それに追随する格好で国内のすべての地域を発展させる政策を採った。そうした政策によって中国は工業化の段階を迎え、高成長を享受できるまでになった。

 ところが、そうした政策を実現すると、どうしても地域的な経済格差は拡大することになる。沿岸部の工業都市には多くの工場が創設され、主力の輸出産業の発展によって人々の所得が上昇した。一方、農村部の発展は取り残され、都市部の労働力供給源としての位置づけになった。結果として、農村部からの出稼ぎ者が大挙して都市部に押し寄せ、労働力の移動性を担保することになった。

 しかし、そうした労働力の移動性は、都市部と農村部の経済的な格差を一段と拡大し、その格差拡大が民主化の遅れと相まって、国民の不満を増幅することになった。そうした状況を考えると、中国の政治情勢は、外側から見ているほど安定してはいないと考えた方が良いだろう。

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