雑誌
憤怒レポート第10弾
独立行政法人「高年収ランキング30」

都市再生機構の小川理事長を直撃。職員の高給について質問したが、「質問は本社で答える」の一点張りだった〔PHOTO〕片野茂樹

 国家公務員の給与削減が決まって、溜飲を下げている場合ではない。省庁の外郭団体では官僚の天下りと彼らの厚遇ぶりに加えて、〝職員もウハウハ〟の呆れた実態が隠されていたのだ

 国家公務員の給与を7.8%引き下げる「国家公務員給与削減法案」が2月23日、衆院で可決された。「官民格差」が叫ばれ続けたなか、ようやく「民」に少し近づくことになった、と溜飲を下げた方もいるのではないだろうか。だが、騙されてはいけない。本誌は先週号で、独立行政法人(独法)のトップの高給と、天下りの実態について追及したが、独法の職員は今回の法案の対象外なのである。

 総務省も、こう説明するのだ。

「独法についてはこの法案に記述はありません。国家公務員が独法に出向している場合も、形式的には一度退職し、その独法の職員の扱いになるので今回の法案の適用はありません」(人事・恩給局)

 独法の職員は公務員とほぼ同じ待遇とされるのに、給与は削減されず、厚遇はそのままなのだ。そこで本誌は今回、総務省の公表文書などをもとに独法の職員の年収を調べ上げた。次ページの表が、「独立行政法人『高給団体』ベスト30」('10年度)である(全105団体・現在は102団体)。詳細は後述するが、トップの「原子力安全基盤機構」の平均年収は約906万円。そして驚くことに、以下12位まで800万円台が続く。30位の「製品評価技術基盤機構」でも約730万円なのである。

(註)総務省公表資料「独立行政法人の役職員の給与等の水準(平成22年度)」をもとに作成。◎・・・常勤職員は国家公務員扱い。※・・・'11年に廃止。すべて事務・技術職員の数値(給与額は1000円単位以下四捨五入)
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 国税庁の調査によれば、民間企業のサラリーマンの平均年収は412万円('10年度)なのだから、比べ物にならない。それどころか、最下位(105位)の「日本司法支援センター」でも約453万円。つまり105団体すべてが、民間平均を上回っているのだ。

 そもそも独立行政法人とは何か。兵庫県立大学大学院の応用情報科学研究科教授・中野雅至氏が説明する。

「橋本内閣の時に、中央省庁の再編や行政に経営理念を取り入れようと、いろいろ目新しい取り組みが行われました。その時にイギリスの制度を真似て作ったのが独立行政法人です。イギリスでは、行政の企画部門と執行部門を分けようという考え方が'70年代のサッチャー政権の時代にできました。

 政策の企画立案をする部門と、実際にサービスを行う部門を分離したわけです。独法は政策を実際に執行する部門として設立し、効率性を高めることを目指したわけです。しかし、日本の場合はイギリスのようにならなかった。政府は、それまであった特殊法人の整理合理化だと声高に喧伝しましたが、結局、衣替えしただけのものが多かった」

 合理化とは名ばかりで、要は看板のつけ替え。職員数も減らなければ、厚遇もそのままという具合で、実に日本的な結果に終わったのだ。しかも、給与は国家公務員より高いというのだから呆れ果てる。中野氏が続ける。

「独法は国家公務員法の適用がないので、労使交渉で自由に給与を決められる。しかも仕事は国家公務員ほどきつくない。そのうえ潰れることもない。もちろん、不祥事などで廃止や統合されることもありますが、実際は、業務が他団体に移管されるので、クビを切られることは稀です。要するに、独法は民間と公務員の〝おいしいとこ取り〟なのです」

 例えば、若者に職業体験をさせる巨大なハコモノ「私のしごと館」(京都府)がムダ遣いだと批判され、廃止の憂き目にあった「雇用・能力開発機構」の業務は、昨年、「高齢・障害・求職者雇用支援機構」などに移管された。松岡利勝農林水産相の自殺('07年)にまで発展した談合事件の舞台となった「緑資源機構」も'08年に廃止されたが、事業の多くは「森林総合研究所」に移管された。利権と甘い汁はそのまま残ったのである。

 公務員問題を追及するジャーナリスト・若林亜紀氏も批判する。

「独法の給与体系は国家公務員のキャリア組に準拠しています。手当ももらっているし、職員住宅もある。マンションを借り上げ住宅にしてくれる独法もある。一般的に、独法は公務員試験を受けずに入れ、給料は官僚並み、仕事は楽です。学生に就職先として人気ですが、形だけ公募して、官僚の子弟や御用学者の教え子だけで募集枠が埋まっていることが多い。独法には本当に優秀な研究者や、公共にふさわしい人材と、楽をしている事務職員、そして天下りが混在しています。優秀な人を盾に、天下りがぬくぬくと自分たちの生活を守っている構図です」

「不祥事」も多発

 実際に独法で働いていた元職員の告発を聞こう。「理化学研究所」に3年前まで勤務していた男性だ。

「給料はめちゃくちゃ高いです。10~20人で一つのチームを作るんですが、そのリーダーになると、給料は月90万円になります。それに諸手当が上乗せされるので、年収は1000万円を軽く超えます。早い人で30歳前後でリーダーになりますが、彼らがみんな優秀な研究者かというと、決してそんなことはありません。2年間まったく論文を出していないなど、不真面目なほうが多数派だと思います。所員は全員1年ごとに契約を更新しますが、定年がないので70歳以上の職員もざらです。架空の研究グループを作ったこともある。予算を消化するためです。理化学研の方針は『とにかく予算を使え』です。私はここに染まると人間としてダメになってしまうと思い、6年目の契約更新はしませんでした。真面目な人ほど辞めていくような気がします」

 理化学研究所では'09年に、53歳の主任研究員が架空発注の手口で予算を飲食代や旅行費用に充て、背任で逮捕された。元職員の告発を聞くと、「さもありなん」と思えてくる。

'07年にエキスポランドのジェットコースターで死亡事故が発生。日本万国博覧会記念機構の責任が問われた

 独法をめぐる不祥事は、後を絶たない。「教員研修センター」や「国立病院機構」でも収賄事件が起きているし、'07年にジェットコースターで死亡事故を起こした「エキスポランド」(大阪府吹田市)に業務委託していた「日本万国博覧会記念機構」は、安全管理を怠っていたことが判明した。ジャーナリストの北沢栄氏は原子力関係の独法を強く批判する。

「ランキングに『原子力安全基盤機構』と『日本原子力研究開発機構』が入っていますが、原子力業界全体で、中央省庁から17団体に役員として36人が天下っています。原子力関係の独法には、国のエネルギー対策特別会計から運営費が入りますが、その財源は我々が毎月払っている電気料金です。電気料金には、使用料に応じた税金である『電源開発促進税』が折り込まれているのです。文部科学省と経済産業省の原子力関係予算の来年度の概算要求は計4600億円。実は前年度より400億円も増額されている。日本原子力研究開発機構が持つ高速増殖炉『もんじゅ』は重大事故をはじめいろいろな不具合が生じて、運転のメドがたっていない。福島第一原発の事故も起こしているのに、こんな予算を要求するなんて非常識です」

 そもそも独法が何をやっているのか知らない国民が多い。旧住宅公団の「都市再生機構(UR)」は比較的、名前を知られているほうだろう。平均年収は4位の約827万円だ。

 前出・若林氏が批判する。

「内閣府の『国民一人あたり雇用者報酬』によれば、'08年の建設業の平均年収は498万円です。役所と建設会社の間でピンはねするだけの天下り団体の平均が、それより300万円以上多いのは、搾取以外の何ものでもない。ことにURは、'05年に姉歯秀次建築士らによる耐震偽装工事事件が起こった時、UR住宅の構造計算書を紛失していたことが発覚した。ずさんな管理で民間デベロッパーに劣るのだから、民間の平均以下の給料が妥当です」

 URの小川忠男理事長(66)を直撃した。

---URの給与が民間に比べて高いことについてどう考えますか。

「本社に問い合わせてください」

---827万円は多いと思いませんか。

「今から霞が関の役所に行かなくてはいけないので、急いでいますから」

 小川理事長は言葉少なにタクシーで走り去ってしまった。もう一人、井上公章副理事長(64)を直撃すると、こう答えた。

「(給料は)年々減額されています。正確に何%というのは分かりませんが、ガクッと落ちたなという印象です。給料だけで言えば、私が前にいた一般の会社のほうが高かったですよ。私もURに入社した当初は高いという印象もありましたが、国の手助けをする、責任ある仕事ですから、高すぎるとは思いません」

 公表されている資料によれば、UR副理事長の給料は月額97万4000円である。これでも高くないと言うのだから、一般の感覚とかけ離れているのではないか。URの広報に聞いた。

「副理事長ポストの年間報酬は'05~'10年度までで6.3%ダウンしています。URの職員の給与が高い理由は、平均年齢が45・4歳と比較的高いことが考えられます。いま新卒採用を控えているので、平均年齢が上がっていること、事業の性質上、都市部に勤務している職員が多いことも理由の一つと思います」

 それだけの理由で民間と400万円もの差がつくのか。公表資料によると、独法の総職員数は、'11年1月時点で13万9000人に上る。前出・中野氏が言う。

「まず、独法が何をやっているかを、国民に示すべきです。何が独法でやるべき仕事なのか、といった大人の議論をきちんとしなければならない。最近は民間のレベルも上がっているので、かつて役所でしかできなかったものが、民間でもできるかもしれない。そのあたりを絶えず見直していく必要があります」

 野田政権は消費税増税の前に、独立行政法人についても抜本的かつ徹底的にメスを入れるべきである。

「フライデー」2012年3月16日号より

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