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100億円超をカジノ豪遊に注ぎ込んだボンボンと父・高雄氏は、時間差で弁護士事務所へ 大王製紙元会長井川意高被告「初公判目前にニヤケ顔」と「父の株戦争」
初公判を前にリラックスムードいっぱいの井川被告。弁護士事務所での打ち合わせ後、六本木に向かった〔PHOTO〕船元康子(以下同)

 2月中旬の夕方、東京・麹町のビジネス街。大通りから一本入った路地に、黒塗りの高級車が現れた。運転手にエスコートされて降りたったのは、大王製紙の元会長、井川意高被告(47)である。昨年末、3億円の保釈金を積んで保釈中の身。外の空気を満喫しているのだろう、顎にはチョロ髭を蓄え、黒のダウンにジーンズ、スニーカーというラフな装いだ。

 井川被告は、とあるビルまで歩いていくと、そこで待っていた事務員風の女性に声を掛けられる。と、ご覧のように、何ともニヤケた表情を披露したのである。向かった先は、自身の顧問弁護士が待つ弁護士事務所であった。

「井川氏が逮捕されたのは昨年11月。自社の連結子会社7社から無担保で借り受けていた106億円ものカネを、ラスベガスやマカオのカジノで使ったとして、特別背任罪で起訴されました。大王製紙の創業家に生まれ、筑波大附属駒場高校から東大法学部へと進んだ生粋の御曹司だったため、話題には事欠きませんでしたね。保釈後も自宅近くの広尾や麻布十番のバーでの目撃談が絶えません。いつも運転手付きのベンツを乗り回しているようです」(全国紙社会部デスク)

59億円が未返済

 そんな井川被告なのだが、この日は弁護士事務所に約1時間滞在。3月1日に開かれた初公判に備えて、綿密な打ち合わせをしていたのだろう。

 それにしても、懐事情はどうなのか。初公判の直前、本誌の取材でも、夜の六本木方面に姿を消す井川氏の姿が確認できている。しかし、カジノで〝溶かした〟106億もの借金の返済見通しは立っていないと言われているのだ、前出・社会部デスクが解説する。

「井川被告は、106億円の貸付金のうち、約48億円を現金や連結子会社の株券を売った代金で弁済しています。しかし、残りの59億円余りは未返済のようです。井川氏が担保として差し出せる株が、14億5000万円余り。それでも44億円余り足りない。その返済の見通しは現在のところ立っていませんね。騒動の収束は、子会社の株の多くを所有する創業家がどれだけ救いの手を差し伸べるのかにかかっています」

息子の意高被告と入れ替わるように弁護士事務所を後にする高雄氏。創業家による会社支配に拘りを見せる

 大王製紙に確認すると、こう答えた。

「確かに、貸付金のうち59億円についてはまだ返済されていません。それは、東京証券取引所に提出した改善報告書にも記載されています」(総務部広報課)

 一方、意高被告の頼みの綱と見られる父親で前顧問の高雄氏(74)はどうかというと、こちらも騒々しい。大王製紙の〝中興の祖〟とまで言われている高雄氏なのだが、事件発覚後、騒動を収束させるどころか、火に油を注いでいるという。

「子会社の株式の多くを保有する高雄氏は、昨年10月に創業家との決別を宣言した大王製紙本社によって顧問の職を解任されました。しかし、創業家による支配を継続させるため、保有する株式を巡って、大王本社との激しい攻防戦が繰り広げられています」(前出・社会部デスク)

 本誌は、息子より先に打ち合わせを終えて冒頭の弁護士事務所を後にする同氏の姿を目撃している。父親の高雄氏も、大王製紙本社との法廷闘争に備えているのだろうか。

「『脱創業家』を決断した大王製紙本社は、高雄氏に、保有する関連会社の株式の買い取りを要求しました。この株式の評価額があまりに低いという理由で、高雄氏は激怒し、反撃に出たのです。筆頭株主の力を使い、関連会社の大王サイドの経営陣を入れ替える作戦を取り始めています。大王本社との話し合いも拒否。『佐光社長は信頼できない』と、自らを追放した大王本社の佐光正義現社長の解任も求めています」(全国紙社会部記者)

 2月12日にエリエールペーパーテック(栃木県)が、22日にダイオーペーパーコンバーティング(愛媛県)、25日には大宮製紙(静岡県)と相次いで臨時株主総会が開催されている。総会では、過半数を握る議決権をフルに活用して、創業家が提案した取締役が選任された。結果、本社サイドの取締役は追放されたのだ。

「高雄氏は、今後も10社前後の関連会社で株主総会を順次開催していく意向を持っています。それに対して、大王本社も迎撃しました。件のエリエールペーパーテックなどの工場がある静岡県富士宮市に、紙オムツを生産する新工場建設の計画をぶち上げたのです。商品の生産をする子会社とのグループ内取引ができなくなるのなら、自前で生産してやろうという算段なのです」(前出・社会部デスク)

 ボンボン元会長・意高被告の裁判とはまた別に、創業家の顔である父親・高雄氏と本社の〝株戦争〟は、泥沼化するばかりなのである。

「無担保で借り受けた金額の大きさと使途(ギャンブル)で、実刑が下される可能性は高い。公判の過程で株式を巡る騒動もクローズアップされるでしょうから、ますます企業イメージが悪くなるかもしれません。経営の混乱に拍車がかかる恐れもあります」(経済ジャーナリスト)

 自社株をオモチャのように勝手に動かす創業家と「ガバナンスのため」(広報課)と創業家排除を狙う本社の争い。オーナー企業は、簡単には変身できそうもない。

「フライデー」2012年3月16日号より

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