グーグルにイエローカード!?
割れる評価と、総務・経産両省の苦渋

 「検索」業界のガリバー米グーグルが、サービスごとに収集してきた個人情報を統合活用し始めた問題で、その開始直前の先月29日、総務省と経済産業省が「注意」あるいは「警告」(イエローカード)に相当する異例の「グーグル株式会社に対する通知」を出して監視に乗り出す構えをみせたことに、「よくやった」と「足りない」の両論が湧き出している。

 またしても、新聞やテレビは、両省が通知を出したことを欧州委員会に追随した程度に矮小化して報じているが、これは、それほど単純な話ではない。

 肯定論は、対米摩擦を嫌う官邸と外務省、執行能力の乏しさから責任を放棄している消費者庁と公正取引委員会など、政府全体に蔓延する「事なかれ」ムードに加えて、法的な制約がある中で、「積極果敢に、貴重な1歩を踏み出した」というものだ。

 一方、EU(欧州連合)の「個人データ保護指令」(法律に相当)違反の疑いを理由に統合延期を求めた欧州委員会や、規制強化のための新法作りに入ったとされる韓国に比べて、両省の対応は「生温い」「弱腰だ」との批判も多く、かなりの説得力がある。

 そこで、グーグルの実態はどのようなもので、なぜ、賛否が渦巻くのか。今後を見据えて、この分野で日本人の個人情報はどうすれば守られるのか。今週は、これらの問題を、緊急で検証してみることにした。

丸裸にされるプライバシー

 まず、別表をみていただきたい。

Googleが収集している主な個人情報

 ひと言に「個人情報」と言っても、あなたのどんな情報がグーグルによって収集されているのか、その実感が湧かない人は多いだろう。

 しかし、この表を見れば、あなたのプライバシーがいかに丸裸にされているかを痛感するはずだ。

Facebookが収集している主な個人情報

 参考までに、株式上場が大きな話題となっているフェイスブックが収集している主な個人情報の一覧表も別表として掲載しておく。これらの2つの表は、大手通信事業者が昨年11月段階の両社のポリシーを参考に拾い上げてリストアップしたものである。

 さて、話を今回の騒ぎに戻そう。ことの発端は、今年1月24日。検索、電子メール、動画、ソーシャルネットワークサービスなど60~70もあるというサービスごとに個別に収集して管理、活用していた個人情報を、統合して活用するとグーグルが発表したことに始まる。

 グーグル自身は、この統合により、サービス間での連携が向上するとメリットを強調していた。例えば、「検索エンジンを使って、『スケートボード』を検索すると、次回YouTubeにログインした際にはスケートボード関連の動画や商品がおすすめに表示され、広告主もターゲットを絞りやすくなり、とくにモバイル端末向け広告で効果が期待できる」と説明していたのだ。

 とはいえ、これは容認しにくい話である。そのことを理解してもらうために、慶応大学の新保史生准教授の解説を紹介しておこう。新保准教授は、学会にとどまらず、総務省、消費者庁、OECDの研究会などでも活躍する、この分野の若手の第1人者である。この解説は、電子メールで行った取材の回答から筆者が要約したものだ。誤りがあれば、その責は筆者の理解不足にある。

 新保准教授はわかり易く解説するため、「企業が保有している社員の健康診断の情報を、本来の取得目的と異なる福利厚生や健康サービス提供のためのマーケティングに転用しようとする」ケースを例に、手続きを「本人から同意を得ずに、社内で扱っている他の情報のポリシー(基本方針、筆者注)も含めて一本化するので、そのポリシーを読んでください」という形で済まそうとしたと仮定し、そうした行為は「本人にとって許しがたい目的変更にあたる恐れがある」だけでなく、現行の個人情報保護法の「企業が保有している個人情報を他の部署が他の目的で利用することは『目的外利用』として許容されない。あえて利用する場合は、本人の『同意』が必要」という趣旨の規定に照らして「気持ちの悪い事例になる」と指摘する。

 そのうえで、今回のグーグルのケースを「60もの異なるポリシーについて、それを単独のポリシーに統合して、(本人の同意を得ず)単なる文章の修正だけで片付けようとしている」と疑問を投げかけているのだ。

 実際のところ、グーグルの方針には、世界中から懸念の声が寄せられている。

 グーグルの足もとの米国では、エドワード・マーキー下院議員(民主党)が1月27日、連邦取引委員会(FTC)に調査を要求すると表明した。ただ、オバマ政権などをはじめ総体では、グーグルの国際競争力を阻害したくないとの思惑の方が勝るのかもしれない。これまでのところ、マーキー議員のような問題意識が大勢になった形跡はない。

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