野球
二宮清純「チェンジアップの伝道師」

 中日の投手コーチに就任した権藤博さんは「生涯投手コーチ」という言葉が大変気に入っているようです。

 投手コーチとしては古巣・中日を皮切りに近鉄、ダイエー、横浜、そして中日と延べ5球団目ですから、大変なモテモテぶりです。

困ったら“ど真ん中”でいい

12年ぶりに現場に帰ってきた権藤コーチ

 次のコメントは横浜の投手コーチに就任した際、私に語ったものです。
「初めっからストライクゾーンを狭くする必要はなんてないんです。たとえて言えば、日の丸の赤い部分にボールを集めるくらいの意識でいい。コントロールミスをして白い部分にボールが散ればなおさらいいでしょう。20メートル近く離れたところからボールを投げているんだから、あそこに投げろ、ここに投げろと言ったところでうまくいくわけないじゃないですか(笑)。だから困ったときには緩い真っすぐをど真ん中に放りなさいと。実際、緩いボールは打たれても遠くへは飛ばないんです。ウチのピッチャーには、そういうボールを投げる勇気を持ってほしい。そして私は彼らの勇気の支えになってやりたいんです」

 注目すべきは「緩い真っすぐをど真ん中に放りなさい」という部分です。要するにこれはチェンジアップのことです。同じ腕の振りで145キロのストレートと135キロのストレートを投げ分けるわけですから、考えてみれば、簡単そうに見えてこれほど難しいことはありません。