スポーツ

二宮清純レポート
福岡ソフトバンクホークス投手 森福允彦
球史に刻んだ「11球」その原点

2012年03月12日(月) 週刊現代
週刊現代

 このシリーズ、4勝3敗でソフトバンクが中日を破るのだが、勝負の分岐点となったのが第4戦6回裏の攻防、まさに「森福の11球」だった。

 シリーズMVPに輝いた小久保裕紀は第7戦後のお立ち台で、こう語った。
「森福があそこで抑えたことが一番、シリーズの流れを決めたと思いますね」

ヤンチャな見た目で損した

 愛知県豊橋市の生まれ。愛知県の高校野球と言えば中京大中京、愛工大名電、東邦、享栄などがしのぎを削る全国屈指の激戦区だ。

 ボーイズリーグで中学時代から硬球を握っていた森福も、当然、強豪校への進学を目指したが縁がなかった。

 進んだ先は豊川高。ヤクルトなどで活躍したギャオス内藤こと内藤尚行が先輩にあたる。県下ではそこそこの実績を誇っていたが、甲子園出場経験はなかった。

「ボーイズリーグのチームの中にチビで細いけど、運動神経のいい子がいた。それが森福でした」

 高校時代の監督・田口聖記は森福の第一印象を、そう語る。

「高校に入って実際に投げさせると、思った以上にコントロールが良く、ピッチャー向きだと思いました。

 特に素晴らしかったのがスライダー。というより、あれはスラーブ。スライダーとカーブの中間のようなボールなんです。一度、どんなボールなのかとブルペンで打席に立って見たのですが、ヒザ元からボールが消えました。あれこそは〝魔球〟。高校生レベルでは打てないボールだと思いましたね」

 この〝消える魔球〟を武器に森福はおもしろいように三振を取りまくった。

 付いたニックネームが「三河のドクターK」。高校2年の夏の県予選では、初戦から56イニング自責点ゼロという、とんでもない記録をつくってみせた。

 しかし、と田口は苦笑を浮かべる。

「私生活に問題のある子でした」

 ヤンチャだったということか?

「野球部員は寮生活をしていたのですが、朝寝坊の常習犯でごはんもロクに食べずに学校に行っていました。私も随分うるさく注意したのですが、これだけは直りませんでした。周囲からもよく嫌味を言われましたよ。〝あんた、どういう指導をしているのかね〟って」

 ここは本人に確認するしかない。

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