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徹底討論 いまとこれからを問う 日本の有力企業をどう見るべきか
植木靖男×田中秀臣×真壁昭夫

 パナソニック、ソニーは復活できるか/トヨタ、日産、ホンダ、生き残るのは?/三菱商事、三井物産の死角/銀行・生損保・証券はどう集約されるのか/NTT、楽天、ソフトバンク、ユニクロは成長し続けられるか

 混沌と激変の時代が幕を開けた。いままでのビジネスモデルは、もう通用しない。どの企業が敗者になるのか。新たな勝者は生まれるのか。日本経済の針路を見通すプロ3人が、真剣に語り合った。

追い抜かれるのは時間の問題

ストリンガー氏から平井氏にトップ交代するソニーは復活できるのか。

真壁 日本の大手電機メーカー8社のうち7社が、2012年3月期の決算を下方修正しました。中でもパナソニック、ソニー、それとシャープを加えた弱電系メーカー3社は大幅赤字で、部門別に見て何が悪かったというとテレビ。ソニーがテレビ事業で8年連続赤字を出していることからもわかるように、いま1インチ=1000円、つまり40インチで4万円という超低価格でしか売れないから作るだけ損になる。

田中 円高の影響も大きかった。経済産業省の調査によると、去年の半ばくらいまでは日本の製造業の9割くらいが1ドル=80円くらいを想定していたが、実際は1ドル=75円までいったから、採算割れしている。

植木 株屋の視点で言わせていただくと、万が一にもパナソニック、ソニーがテレビ事業の赤字から脱することができても、両社の株価はピーク時を超えることはない。株式市場では、〝新しい材料〟がないと株価がピーク超えすることはありえないからです。

真壁 アップルがいい例だと思うんですが、'90年代半ばにパソコンが売れなくなって、事実上・破綻・に近い状況になった。ところがスティーブ・ジョブズが戻ってきて、iPod、iPhone、iPadと3本続けてホームランを打った。それで株価が上がって、いまや世界有数のITメーカーになった。要するにパナソニックもソニーも〝いまのまま〟では先が見えてこない。

田中 ただ有能な経営者がいれば、とっくに解決策を出していたでしょう。パナソニックのように7000億円も赤字を出すような企業は市場から消える運命にあるのでは。

植木 冷蔵庫や洗濯機といったシロモノ家電では、まだ中国のハイアールなどより日本勢が優位だとはいえ、追い抜かれるのは時間の問題でしょうしね。

真壁 だからパナソニックもソニーも新しいビジネスモデルを作らなければいけない。さきほどの電機メーカー8社の決算の話に戻ると、唯一下方修正しなかったのが日立です。いまから数年前に大幅赤字を出して、中西宏明社長のもとで軸足を家電からインフラ事業に転換したのが奏功している。同じく家電から重電を含めた総合電機系メーカーにシフトしている三菱電機、東芝も下方修正したけど黒字は確保しています。

植木 パナソニックやソニーが同じように転換できますか。

真壁 弱電を捨てるのは難しいでしょうね。それに総合電機メーカーはエレベーターや発電用タービンを作ってきた社内技術の蓄積があったから、転換がスムーズにいった面もある。同じことをパナソニックやソニーが明日からできるかというとたぶん難しいでしょう。そこで、次のテーマが出てくるわけです。パナソニックやソニーがアップルのようにイノベーション(革新)を起こす商品を生み出すことはできるのか。

田中 イノベーションといってもいままで見たこともない、何かとてつもないモノを生み出す必要はない。既存のモノをうまく組み合わせてできた新しいモノでも十分にイノベーティブな商品。それができるかどうかということですね。

真壁 よく言われるのがソニーが作って、'80年代に大ヒットしたウォークマンの例です。これは部屋の中で聴くものを歩きながら聴けるようにしたというのがミソで、技術的にはラジオ、テープレコーダーなどの技術をあわせたものだったと思います。要するに新しいコンセプトを提案するのが大事で、技術的には既存の組み合わせでいい。さらに言えば、アップルはモノをほとんど作っていない。企画と立案はやるけど、実際に完成品を作る作業は中国のフォックスコンなどに委託しています。

植木 モノを作るのではなく、アイデアを作る。

真壁 ただ、そういう点で日本メーカーを見ると、いまだアイデアで勝負しようという想像力が欠けている面があるように思える。

田中 いまのソニーを見てもコンテンツ事業に傾斜しているから、ビジネスモデル自体が既存のテクノロジーを組み合わせた新商品を開発するということになっていません。

植木 では日本勢はどう生き残っていけばいいのか。結局は、「軽薄短小」を目指すべきだと思います。アップルの商品にしても、いま話題のボーイング787にしても大量の日本製部品が使われているように「軽薄短小」の商品ではまだ強い。だからソニーもパナソニックも冷蔵庫ではなくリチウムイオン電池を作るほうに力を入れたほうがいい。

真壁 さらに重要なのは、小さく作って成功したデジカメがいまやテレビ同様に収益が出なくなっているように、コモディティ(日用品)化したらその市場から出て行く。収益性を維持できなくなったら次の商品を開発して、また撤退してということを間断なくやっていくしかない。一方の総合電機は当分は東アジアのインフラ投資で食べられるでしょう。

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