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根本的に考え直さないといけない「震度7」なら、助からない

「人間は、震度6強の時点ですでに、立っていられなくなります。当然、これが震度7になると、もはや歩いて移動することなど不可能。這って動くのがやっとという状態です。

 実際に震度7を記録した阪神・淡路大震災を経験した人の証言では、『まるでドラム式の洗濯機の中にいるようだった』そうです。固定されていない部屋の中の家具はすべて空中に浮き上がり、ガラス製のものは全壊してしまう」(災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏)

 震度7、それは現在の地震学の物差しで、〝これ以上ない最大の激震〟を意味する。〝最大〟である以上、どれだけ強く揺れるのか、青天井ということだ。

 仮に、一瞬で日本列島が沈没するような地震が起こったとしても、理論上、「震度7」となる。そういう地震が来る可能性があることを、政府が認めた意味は大きい。

「これまで、首都直下型地震の被害想定では死者1万3000人とされていましたが、こうした想定すべてをゼロからやり直す必要があります。震度7となれば、死者は数万人単位で増える可能性が高いと思います」(前出・和田氏)

 日本の歴史上、震度7を記録した地震は、これまで3回しか起きていない。'95年の阪神・淡路大震災、'04年の新潟県中越地震、そして昨年3月の東日本大震災である。

 ただこのうち、新潟県中越地震は人口が少ない地域で発生したために死傷者は揺れの割には多くなく、3・11の場合は揺れがゆっくりだった(長周期)ため、地震そのものによる被害は少なかった。

 だが、今後想定されるのは、東京という超人口密集地帯の直下で起きる震度7だ。同じような地震は、世界的に見ても阪神・淡路大震災しか前例がない。「阪神」と同程度の揺れが、さらに人口過密な首都で起きる。油断していると、今度こそ助からない。

「たとえば個人の住宅レベルで見ると、これまでに出回っている各種の震災対策グッズなどは、震度7では役に立たなくなる可能性があります。タンスや本棚の上部を天井との間で固定する棒などは、震度5程度までなら効果がありますが、震度7では天井自体が崩壊する可能性があるため、用をなさなくなるでしょう」(武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部・島村英紀特任教授)

 阪神・淡路大震災では、1981年の建築基準法改正以前の建築物が、軒並み倒壊した。東京でも、下町を中心とした住宅密集地には、築40~50年の家屋が多数残っている。こうした建物は、震度7の地震に直撃された場合、倒壊する危険性が極めて高い。

 ではそれ以降の比較的新しい建物なら安全かと言えば、そんなことは決してない。

「これまでは、新しい建築基準法で建てられていれば、地震がきても大丈夫と言われていました。ですがそれは震度6レベルまでの話で、震度7となると、新基準の建築物でも倒壊の危険がかなり出てきます。震度7といっても、単にそれ以上の想定がないというだけで、実は〝震度8〟級の揺れになるかもしれない。建築の時期にかかわらず、建物が無傷で済むとは考えないほうがいい。次は『家に殺される』可能性があることを、認識する必要があります」(防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏)

どこにいても死のリスク

 自分の家の外を見ても、震度7では、あらゆる場所が危険地帯となりうる。阪神・淡路での高架倒壊は衝撃的だったが、東京ではそれが、より大規模に起こる可能性がある。

「都内には、築50年以上経過した橋脚がたくさんあります。阪神・淡路大震災以後、耐震補強工事といって橋げたに鉄板を巻いたりしていますが、本来は建て直さないと震度7には耐えられません。

 他にも、揺れが強い地下の浅い場所を走っている古い地下鉄などは、トンネルが崩壊して生き埋めになる可能性があります。一方で地上の鉄道はもっと危険です。山手線などの高架自体が崩壊する可能性がありますし、周囲のビルが崩れて線路上に倒れこんでくる恐れもある」(前出・和田氏)

 建物の倒壊数が増えれば、そこから出火して火災が広がる危険性もいっそう増す。住宅密集地で火災が同時発生すれば、震災時は消防車も駆けつけることができず、一挙に燃え広がる。

「隅田川、江戸川、荒川など河川沿岸の、江東区や江戸川区あたりは住宅密集地のうえ、〝こんにゃく〟の上に家屋が建っているような、地盤の弱い土地でもある。こうした場所で建物が一斉に倒壊して火が出たら、火が火を呼んで被害者の数も大きく増えることになります」(前出・島村氏)

 基本的に安全地帯は存在しない「震度7の世界」では、「常に生死にかかわるリスクを負っているという心構えと準備が必要だ」と、前出の和田氏は話す。

「地震が怖いと言いながら、最低限の耐震補強や防災備品の準備、家族の話し合いすらしていない人が多い。震度6から震度7になるということは、とにかく圧倒的に死の危険が増すことなのです。今回の想定見直しを機に、日々の根本的な姿勢から見直していくべきだと思います」

 あなたの日々の生活範囲内に、地震が来たら飛び上がりそうな棚や家具、粉々になりそうな器具、落ちてきそうな天井構造物はないだろうか。家族の身の回り、子供たちの学校はどうだろうか。〝震度7〟を前提に、もう一度点検してほしい。

「週刊現代」2012年3月9日号より

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