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 いつものことだが、民主党の政策は面白い。最近の例で言えば、休眠預金の活用。休眠預金は'11年3月時点で、相続などで払い戻す分を差し引くと約540億円にもなる。野田政権はそれを召し上げようとしているわけだ。

 内閣府のホームページには、「金融機関における休眠預金口座の取扱い及び休眠預金の活用に関する法律案(休眠預金法案)」が、平成23年3月8日版として掲載されている。要は、内閣府の「新しい公共」推進会議で前から検討されていたものに、今回、国家戦略室の成長ファイナンス推進会議が「経済成長に役立つ。復興の一助にもなる」として目を付けたということだろう。

 一般的に金融機関は、預け入れや払い戻しなど最後の取引から10年が経過すると、残高が1万円以上の場合は預金者の届け出住所に通知したうえで、預金者が確認できない口座を休眠口座とする。また、残高が1万円未満の場合は通知をせず、10年経過の時点で自動的に休眠口座扱いにする。

 さて、この法案を法律のプロの目から見ると、おかしなことに気づく。まず、対象となっている金融機関として、銀行(ゆうちょ銀行を含む)、信用金庫、信用組合など8業態が定義されているが、その中に農協(JAバンク)が入っていないのだ。JAバンクも貯金を扱っており、当然ながら休眠口座もある。にもかかわらず例外扱いするのであれば、他の金融機関と著しい不公平が生じる。

 また、「休眠預金口座に入金された金銭の残高の合計額に相当する額を寄附しなければならない」という条文もある。これが「召し上げ条文」なのだが、寄附は本来、自発的な行為であるから、それを「しなければならない」というのは論理的に間違っている。

 ネット上などでは「国家が国民の財産を勝手に使っていいのか」といった反対意見が出ているが、法律案を読むと政策の本質が見えてくる。休眠預金は放っておけば金融機関の収益になる。その収益部分を政府が取り上げようとしているのだ。そうであるなら、本当は「超過収益については課税する」という条文にするべきだったのだが、課税という言葉を使いたくなかったために、「寄附しなければならない」という変な日本語になったのだろう。

 イギリスや韓国などでは休眠預金が金融機関の収益になっていることが批判され、休眠預金活用のための基金が作られて社会福祉などに使われている。日本でも金融機関の"不労所得"にメスを入れるということであれば、それほど目くじらを立てる必要はない。

 だが、以前から「増税で経済成長できる」などと奇妙な論理を振りかざしてきた民主党は、民間にカネを持たせておいても有効に活用できないから、賢い政府が吸い上げて役立つ使い方をするべきだと信じているらしい。今回も国家戦略室の成長ファイナンス推進会議は、民間金融機関のカネを政府が召し上げて特定分野に供給すれば経済成長を図れるし、復興にも役立つと考えているという。

 この考え方は、かつて民間金融機関を押しのけて、郵貯と政府系金融機関が跋扈していた時代への先祖返りを思い出させる。そう言えば、郵政民営化を逆戻りさせて日本郵政グループの再国有化を行ったのは民主党政権だった。

 年金運用の失敗を見るまでもなく、官僚に金融を任せるとロクなことにはならない。だが、官僚主導の民主党にはそんな自明のことすらわからないのだ。

「週刊現代」2012年3月10日号より


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