張り切る金融庁をよそに、やる気のない厚労省の怠慢。AIJ事件が暴いた「企業年金の危ない実情」

 年金資産を運用するAIJ投資顧問が、顧客から預かった運用資産約2000億円の約9割を失っていたことが明るみに出た。資金の行き先(本当に運用の損だけなのか?)や、損失の経緯などまだ分からない点があるが、虚偽の運用報告(金融商品取引法違反)があったことは確かなようだ。

 そもそも不自然なまでに安定的に高利回りが実現していることと、運用と資産保全の実態がよく分からないことから、はじめからAIJ投資顧問を避けていた年金関係者も少なくないようだ。

 ある年金運用関係者の話によると、確定給付型企業年金(厚生年金の代行部分を持たない確定給付年金の仕組み。大企業の年金が多い)の運用担当者は「AIJは怪しい」として多くが同社を相手にしない方針を採った一方で、主に総合型(多くは中小企業が業種や地域別に集まって設立)の厚生年金基金が数十基金AIJ投資顧問のセールスに引っ掛かった。同社は、地方の有力基金をまず落とし、そこからの紹介で顧客を増やしたと聞く。

早々に登場した自見金融相

 厚労省の発表によると、運用資産の半分前後をAIJ投資顧問に委託していた基金が3基金ある。こうした基金では存続が危うくなる可能性があるし、この損失を補填するために、加入企業が倒産する可能性もある。

 今回の「AIJ事件」(これは、事件と呼んでいいだろう)の本質は、半分は運用業者であるAIJ投資顧問の不正だが、もう半分は、年金加入者のお金を預かるプロであるはずの年金基金がAIJの不正とそもそもの運用のおかしさを見抜けずに年金資産を大きく毀損してしまった杜撰な年金運営の問題だ。

 さて、運用業者の問題と年金基金の問題があるとなれば、監督官庁は金融庁と厚生労働省になるが、事件発覚からの両官庁の動きは対照的だ。

 24日に事件が大きく報じられた時、筆者は、テレビ画面に出てくるのは問題の重要性から見て小宮山洋子厚生労働大臣かと思っていたら、出てきたのは自見庄三郎金融担当大臣の方だった。