高橋洋一の参考人出席はガチンコで拒否!「やらせ質問」国会が封印した「増税に不都合な真実」

 先週23日、衆議院予算委員会で参考人として呼ばれるはずだった。中川秀直議員(自民党)から小泉・安倍政権時代の政策運営について証言するように求められていたのである。国会の参考人は、委員会において審査又は調査のため必要があるときは、参考人の出頭を求め、その意見を聴くことができることという規定(衆議院規則第85条の2、参議院規則第186条)に基づくものだ。私はこれまで参議院予算委員会などで呼ばれた経験がある。ところが、民主党の反対にあって実現しなかった。

 当日は、どんな質疑が行われたのか、インターネット上のビデオライブラリーでチェックした。民主党の質問者は、津村啓介議員(日銀出身)、岸本周平議員(財務省出身)、近藤和也議員(野村證券出身)だった(質問順)。

はっきりいえば、「馴れ合い質疑」だ。与党議員なのである程度はやむを得ないと思うが、やり過ぎるとかえって議員のためによろしくない。国民はもっと真実を知りたいので、ガチンコを期待しているだろう。

 民主党議員の意見は的外れが多いが、とりあえずここでは、為替や金利の話に絞ってかなりずれていたことを指摘しておこう。もし私が参考人としてその場にいたら、述べたであろう話でもある。

 津村議員の金利の質疑は、やらせかと勘違いしてしまいそうだ。長期金利が1%上昇した場合、国内金融機関の損失は大手・地方どのくらいになるかと聞いた。これに、白川方明日銀総裁は「仮に金利が全期間に渡りまして一律1%上昇するというケースを想定しまして、金融機関の保有する債権の下落幅、損失を計算いたしますと、大手行につきましては3.5兆円、地域の銀行については2.8兆円でございます。これは議員ご存じのとおり機械的な前提をおいて計算しておりますので、あわせて金利が上昇いたしますときには、貸出金利もあがるということでございます。」と答えた。

 この種の話が馬鹿馬鹿しいのは、2月13日付け本コラム「バーナンキ発言、「物価目標」、銀行の国債暴落シミュレーション――日銀の情報操作に踊らされ過去の事実までねつ造する「マスコミ報道」を検証する」の三菱東京UFJ銀行の「国債暴落シミュレーション」に書いてある。

リスク管理をやっている者であれば、損失額は、「保有額」×「金利上昇幅」×「平均償還期間」になることを知っている。都銀の保有国債は100兆円ほどで、金利上昇幅は1%、平均償還期間は3.5年程度だから、暗算でもだいたい3.5兆円というのは出てくる。地銀と第二地銀の国債保有額は40兆円程度、金利上昇幅は1%だと、平均償還期間は7年程度になってしまう。これはちょっと長すぎる。もし本当ならあまりにリスクを抱えすぎだから、日銀はこんな数字を知っているなら金融機関のリスク管理をもっと指導すべきだろう。

もっとも、この金利シミュレーションはあまりに一面的だ。まず、白川総裁が最後にはっしない口調でいった「貸出金利もあがる」がある。これは国債から貸出に資産を変えれば損失は相殺されることを意味する。次に、資産面で 金利が上がると国債では損がでるが、負債面の預金では低い調達金利のままであるので、この面ではプラスがでる。いずれにしても、資産と負債の両方を全面的に見直してリスク管理を行う。これができない金融機関はプロとして失格と言わざるをえない。こうした分野は資産負債総合管理(ALM:ASSET LIABILITY MANAGEMENT)といい、23日の質問者や答弁者はその知識が欠如していて、無用に国民を煽っているだけだった。

当たっているから使いたくない「真実」

岸本議員は、非ケインズ効果を政府に言わせたかったようだ。非ケインズ効果とは、財政赤字削減が将来に対する期待の改善を通じて消費を増加させ総需要を増加させることだ。財務省が増税を必要というときによく使う手だ。

もちろん理論的にありえるが、日本でその存在が実証されたとは必ずしもいえない。1980年代のデンマークやアイルランドなどであったといわれているが、そのキモは金利の低下である。非ケインズ効果に限らず財政再建の成功例としては、金利の低下がある。

これを日本にあてはめると、名目金利の低下は考えにくいので、そのまま非ケインズ効果があるとは考えにくい。

しかし、名目金利でなく実質金利を下げて経済を活性化する手は、増税ではなく、金融政策を使えばある。マイナス金利を作るのだ。実質金利は名目金利から予想インフレ率を引いて得られる。予想インフレ率は通常物価連動債の利回りから得られるが、23日、中川議員の質問に対して、白川総裁は「日本の物価連動債では予想インフレ率弾き出せない 」といい、市場関係者のアンケート調査を使っていると答弁した。日銀の意向を受けやすいアンケート調査より、市場が薄くても身銭を切った市場からの情報のほうがいいだろう。

物価連動債からの予想インフレ率(ブレーク・イーブン・インフレーション率)では、白川総裁は就任以降、ほとんどマイナスであったが、ほとんど当たっている。いうなれば白川総裁は就任直後からデフレ脱却できないという市場からの評価であったわけで、当たっているが故に使いたくないのだろう。

 
リーマンショック以降、世界各国で明らかになったが、中央銀行がバランスシートを膨らませると半年くらい後に予想インフレ率は高くなる。その結果、実質金利が下がって、経済危機から脱出できた(2010年5月24日「「実質GDP4.9%増」でもデフレ脱却が遠いのはなぜか」にある図を参照)。要するに、財政再建しようとすれば、増税より金融政策が重要というわけだ。
 
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