特別対談 中沢新一×内田樹 「橋下現象と原発これからの日本を読む」

2012年03月01日(木) 週刊現代

週刊現代経済の死角

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中沢 原発の問題もそうですね。国土の一部が損なわれるほどの被害をこうむって、さすがに直後は「脱原発」の声が高まった。でも財界とかメディアとか、声の大きな人が「推進に決まってるじゃないか」と言ったら、すぐ「そうかも」ともとに戻っちゃう。原因は、脱原発そのものがイデオロギーの域を出ていないからです。

 今度の大震災で、日本人は大転換を起こすきっかけをもらったんです。その大転換は自然とのかかわり方を含めて、とても深くて大きな問題にかかわっていて、原発のことは、その一面の表れにすぎない。

内田 僕がブログに「テクノロジーにいいも悪いもない。使われ方が問題だ」と書いたら、「原子力技術は存在自体が悪だ」と書いてきた人がいた。ほとんど異端審問官のような口ぶりだった。硬直してるね。

中沢 原子炉の内部で起きる核分裂は、本来は太陽の内部で起きているレベルの現象で、生態圏に持ち込まれたことのなかったエネルギーです。この原子力技術そのものが、革命的な発明だったことは間違いありません。

内田 それ自体はすごい発明でしょう。

中沢 たしかに今の原発という発電システムには重大な欠陥があります。でも、原子力技術と、産業と利権に組み込まれてしまった原発の問題を一緒くたに論じると、本質が見えなくなってしまう。

内田 原子力は現代における「荒ぶる神」だと思う。一神教文化圏には「恐るべき神」に対応するノウハウがある。でも、日本人にはそれがない。原子力を世俗的なカネ儲けや外交手段のカードのように扱った。恐るべきものはもっと真剣に恐れるべきだったんだよ。

中沢 吉本隆明さんが「原子力を否定することは人間がサルに戻ることだ」と発言したのも、おそらく真意は別のところにあった。科学技術そのものを否定してはいけない、と言いたかったんだと思う。

 でも、石原慎太郎さんが「吉本隆明もサルになると言っている」と引用したことで、「原発推進」の論理にすり替えられてしまう。ほんとうに吉本さんがおいたわしくて。

内田 原発は人間の要求に奉仕するただの道具にすぎないという話に落とし込んで、原子力に対する恐怖をごまかしてきたんだけれど、実際はそんなごまかしが効く相手じゃなかったんだ。だから、事故の後、「罰が当たった」という言葉が説得力を持ったんじゃないの。

ビジネスの言葉では語れない

中沢 でもさっきも言ったように、脱原発がイデオロギーで終わってしまったら、財界などの大きな声に勝つことはできない。

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