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究極の開き直り ギリシャ人はデフォルトなんか怖くない「ユーロなんかクソ食らえ!」「くたばれ、グローバル経済」
〔PHOTO〕gettyimages

 ヨーロッパ文明発祥の地が、いまや欧州金融危機の発祥の地になろうとしている。国が潰れるかもしれないのに、デモやストに明け暮れるこの人たちって、何を考えているのかと思ったら・・・・・・。

余計なお世話だ

「おまえら政治家は田舎に行ってホウレンソウでも植えていろ!」

 2月13日未明、アテネの国会前広場では、EUやIMF(国際通貨基金)に言われるままに緊縮政策を約束した政治家たちに対し、怒りのシュプレヒコールが鳴り響いていた。集まったデモ隊の数は5万5000人。交通機関や公共施設もストで当てにならず、テレビの国営チャンネルは過去の番組の再放送ばかりで、ニュースが流れない。報道規制かと思ったら、単にテレビ局員もデモに参加していただけだった。

 3月20日に迫った145億ユーロ(約1兆5000億円)の国債償還を控え、この日、ギリシャ国会は約1300億ユーロ(約13兆3000億円)の追加支援を受けるため、今年中に公務員を1万5000人削減することや、最低賃金引き下げ、年金減額などを決めた。だが、国会で緊縮政策を決めても、EU側はギリシャが本当にそれを実行するのか懐疑的で、支援決定を先送り。時間だけが過ぎていく。

 追加支援がなければギリシャのデフォルトは確実で、国家は崩壊に向かう。それなのに、自分たちの給料や年金の心配ばかりで連日のようにデモやストに明け暮れるギリシャ国民に対して、違和感を感じる日本人は少なくないだろう。

 ただ、日々の生活で精一杯の庶民は、国家のことなんか考えられる余裕はない。夫がギリシャ人公務員だという在住18年の日本人女性が語る。

「夫の給料は'09年までは月1300ユーロ(約13万2000円)でしたが、'10年4月から何度もカットされ、現在は800ユーロです。今後、さらに2割カットされることも決まっています。それなのに日本の消費税にあたる付加価値税はこれまでの19%から昨年3月には21%に、7月には23%に上がった。年金も下げられるし、どうやって暮らしていけばいいのか。公務員に甘すぎるのは確かですが、一番腹が立つのはこれまで何も手を打たなかった政治家たちですよ」

 労働人口の4人に1人が公務員という公務員天国ギリシャでは、彼らの給与と年金支払いだけで、政府支出の約40%を占めると言われる。これは政治家たちが自分の人気取りのため、政権交代のたびに公務員を増やしてきた結果でもある。もともと、ギリシャの人々は納税意識が希薄で、たとえば街で買い物をして代金を払う際、店員は客にこう尋ねる。

「領収書は必要?」

 要らないと答えると、

「じゃあ、安くしとくわ」

 要するに消費者は品物を安く買えるし、売り手は売り上げが記録に残らないから、収入を低く申告することで税金を安く抑えられる。どちらもハッピーだろうという論理である。その結果、ギリシャのGDPの4分の1にあたる金額が脱税されていると、EUは指摘している。

 公務員天国で、かつ脱税天国。同情の余地がないように思えるが、当のギリシャ人たちにも当然、言い分はある。

「俺たちは子どもの頃から、ギリシャはヨーロッパ文明発祥の地で、偉大な国だと教わってきた。400年にわたってオスマントルコに占領されていた時代も、自分たちの言葉や宗教だけは守り抜いてきた歴史と誇りある民族だと。だいたい、ECに入ったのだって('81年加盟)、ユーロ圏に入ったのだって('01年)、別に俺たちが頼んだわけじゃない。それなのに、よその国から給料を下げろとか、年金を下げろとか、余計なお世話だと思わないか」(デモに参加したギリシャ人男性)

 ギリシャは1826年から1932年の約100年で、5回のデフォルトを経験している。もちろん、預金封鎖など一時的に辛い思いはしたが、逆に言えばその都度、復活したからこそ、ギリシャという国がある。デフォルトするなら、すればいい。なんとでもなるという思いがギリシャ国民にあっても不思議ではない。

 そもそも、長い歴史を持つギリシャにとって、EU圏に加入し、これまでの単一通貨ドラクマからユーロを使うようになったのなんて、昨日、今日の話である。

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