谷垣自民党総裁は増税、解散、大連立に秋波を送るが、野田首相は「増税もできず解散もできず」の公算がますます高く
政局の鍵を握る自民党の谷垣禎一総裁〔PHOTO〕gettyimages

 政局が動いてきた。鍵を握るのは、自民党の谷垣禎一総裁と小沢一郎元民主党代表である。まず谷垣からみていこう。

 谷垣は20日の講演で「(民主、自民両党とも)税の骨格に対するベクトルは同じだ。衆院を解散して両方がそういうこと(消費税引き上げ)を掲げて戦えば、どちらが勝つかは別として、足を引っ張るのはやめる流れにもっていかなければならない」と述べた。

 これはずばり「増税を認めてやるから解散せよ。後は大連立でいこう」という話である。野田佳彦首相に対して、話し合い解散・増税大連立を呼びかけるアドバルーンを上げたとみていい。

 実はこれとまったく同じ話を、谷垣は菅直人政権時代の2011年2月にも言っている。当時、コラムでも紹介したが、谷垣は菅との党首討論でこう述べたのだ。

「自民党は昨年の参院選で当面10%の消費税は必要という案を掲げた。次の衆院選マニフェストも当然、それを踏まえたものになる。民主党も方向性はそんなに違わないだろう。選挙の後、勝った方がそれをやって、負けた方も腹いせだなんてことはやめにする。それが、この問題を解決する近道だ」

 谷垣は自民党の中で、もっとも早くから消費税10%論を唱えてきた。それを旗印に総裁選も戦った元祖10%論者である。その後を継いだのが与謝野馨元経済財政担当相だ。

 谷垣は最初から増税賛成なので、政策だけで考えれば、民主党の増税派と大連立を目指すのは自然な選択である。それなのに「マニフェスト違反だから、とにかく解散・総選挙を」と迫ってきたのは、ひとえに党内が増税容認・大連立ではもたないと逡巡したからだ。

 解散となれば、議員は小選挙区で民主党と一騎打ちで戦わなければならない。いまさら敵方が苦労して段取りを整えた消費税引き上げ路線に乗って「みなさん、増税が必要です」と選挙カーから演説しても勝ち目がないと考えるのは当然だろう。

 次の総選挙では、増税に賛成か反対かが最大の対立軸になる。みんなの党ははっきり増税反対だし、道州制を掲げる「大阪維新の会」も社会保障財源を賄う国税としての消費税引き上げには反対するだろう。そこで増税賛成を貫くのは、とりわけ落選中の議員には大変だ。

 自民党内には将来の増税を容認しても「その前に歳出削減や行政改革などやることがある」という慎重論も根強い。

鍵を握るのは小沢一郎

 話し合い解散となれば当然、密室での談合になる。合意文書も取り交わすだろう。そんな手法がいまどき国民の支持を得られるか。そんな政治的アートの力仕事をやり遂げる陰の立役者が両党にいるか。谷垣は増税大連立に傾きながら結局、腹を固められないとみる。

 谷垣はブレながらも、最後まで「解散・総選挙を」と叫ぶだけではないか。しかし、それでは政局の主導権を握れない。

 そこで鍵を握るのは小沢だ。小沢は朝日新聞のインタビュー(2月23日付け朝刊)に答えて、消費税引き上げに反対する姿勢を鮮明にした。増税路線のまま野田が解散・総選挙に踏み切れば「民主党内閣、民主党自身の終わりだ」と述べ、政界再編の可能性にも言及した。

 野田にとって、まずは消費税引き上げ法案の閣議決定が最初のハードルになる。そこを乗り越えたとしても、衆院での採決がどうなるか。

 民主党・無所属クラブの衆院議席は291。小沢だけでなく鳩山由紀夫元首相も反対姿勢を鮮明にしている。ブレ始めた国民新党が賛成したとしても、小沢グループその他で60人程度が造反すると、増税法案の可決成立は難しくなる。

 なんとか衆院を通過しても、与党が少数の参院で法案成立は絶望的だ。参院で否決されるか60日以内に採決されなければ、衆院に法案が戻ってくる。3分の2以上の多数で再可決できれば成立だが、いまの勢力図をみれば、それも不可能だ。

 結局、谷垣が話し合い解散で党内をまとめ、野田政権と話をつけない限り、増税法案は成立しない。

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