ハーバードの先を行くリーダー育成「東大EMP」に注目せよ!

2012年02月20日(月) 田村 耕太郎

 

 9月入学が話題になる東大。グローバル化への大きな一歩である。とはいえそれは「5年後を目途として」である。このスピード感のなさにはズッコけてしまう。しかし、実は東大はとっくの昔にグローバル化に向けて始動している。今回から数回にわたり、既に始まっている世界に先駆ける東大の挑戦について取り上げたい

第一回の今回は東大EMPである。EMPとはエグゼクティブ・マネジメント・プログラムの略である。世界のEMPを経験してきたものとして言わせてもらえば、東大のEMPは世界最先端のものだと思う。個人的な話で恐縮だが、私はオックスフォード大学、スタンフォード大学、ハーバード大学でこのEMPなるものを経験している。これら世界の一流校でのEMPとは経営幹部候補生に総合的な管理者教育を与えるものだ。

共通しているのは短期でかなりの高額であること。参加者の目的は、人脈獲得と最新の経営課題についての知見獲得。人脈は魅力的だ。一流校のMBAに入っても成功できるのは所詮数割。しかし、EMPは全員がMBA後の選抜に勝ち抜いた経営幹部手前の人材や一定程度の成功を収めた起業家だ。つまり、すでに各界で成功している人たちとネットワーキングできる手っ取り早い機会なのである。

 最新の経営課題を巡っての議論もEMPはおもしろい。ビジネス経験がほとんどないMBA学生と違ってEMPに来ている人たちは経営経験が豊富だ。議論の中身が濃く、そういう人たちを相手に授業を仕切る教授たちの本気度も違う。他の業界のトップ候補と胸襟開いてビジネスの課題を議論し合う機会など、普通ないので刺激的である。

 EMPが高額なのは、戦略的だ。すでに成功している人たちをコストでスクリーニングに掛けるのだ。1ヵ月のEMPで300~400万円。2ヵ月だと、円高の今でも、600~700万円である。結果、ビジネススクールにとっては「金のなる木」だ。ちなみにハーバードでさえ、MBAプログラムは赤字である。大黒字を叩き出すEMPで財政を賄っているのだ。

リーダーシップも経営も教えない!

 東大のEMPも授業料は高額だ。期間は半年間。その半年間の週末に集中して講義が行われる。それで600万円である。東大のあらゆるプログラムの中で断トツに高額である。世界トップレベルの高さだ。ただ、週末にいくつか講座を聴講させてもらったが、その価値は十分あると思った。対象は各界40代のリーダー。毎期ごとに定員25名。大企業から10名、企業家5名、官庁5名、弁護士・医師・会計士等のプロフェッショナル5名というバランスを目指している。現在25名募集のところ、50名を超える応募があり、倍率は2倍強。今の期で私費参加も25名のうち6名いるという。




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田村 耕太郎

(たむら・こうたろう) 前参議院議員。エール大学上席研究員、ハーバード大学研究員などを経て、世界で最も多くのノーベル賞受賞者を輩出したシンクタンク「ランド研究所」で唯一の日本人研究員を務めた。
国立シンガポール大学公共政策大学院名誉顧問、新日本海新聞社取締役東京支社長。
1963年生まれ。早稲田大学卒業、慶応義塾大学大学院修了(MBA取得)。デューク大学ロースクール修了(法学修士)、エール大学大学院修了(経済学修士)、オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了、ハーバード大学ケネディスクール危機管理プログラム修了、スタンフォード大学ビジネススクールEコマースプログラム修了、東京大学EMP修了。
2002年から10年まで参議院議員を務めた間、内閣府大臣政務官(経済財政、金融、再チャレンジ担当)、参議院国土交通委員長などを歴任。
シンガポールの国父リー・クアンユー氏との親交を始め、欧米やインドの政治家、富豪、グローバル企業経営者たちに幅広い人脈を持つ。世界の政治、金融、研究の第一線で戦い続けてきた数少ない日本人の一人。
2014年8月、シンガポールにアジアの地政学リスクを分析するシンクタンク「日本戦略情報機構(JII)」を設立。また、国立シンガポール大学(NUS)リー・クワンユー公共政策大学院の兼任教授に就任し、日本の政府関係者やビジネスリーダーに向けたアジア地政学研修を同校教授陣とともに実施する。
著書に『君に、世界との戦い方を教えよう 「グローバルの覇者をめざす教育」の最前線から』などがある。