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二宮清純「落合博満の『先見力』」

2012年02月17日(金) 二宮 清純

 好き嫌いは別にして、8年間で4度のリーグ優勝を達成した元中日監督・落合博満さんの手腕に異を唱える人は少ないでしょう。

川崎、開幕戦先発の意味

“アライバ”のシャッフルもサプライズのひとつ

 落合采配にはサプライズがたくさんありましたが、何が驚いたと言って、就任1年目の開幕戦で、肩の故障のため、3年間にわたって1軍のマウンドから遠ざかっていた川崎憲次郎を先発に起用した時の衝撃は未だに忘れられません。

 しかし、川崎さんによると、年明け早々に落合監督から「開幕で使うぞ」と告げられていたというのです。「落合さんから電話がかかってきて、“開幕投手はオマエで行くから”と言われ、“わかりました。やります”と答えました。その時、肩はもうゲームで投げられる状態でしたが、まだ痛かったし、自分のボールではなかった。何でオレも“やります”と答えたか覚えていないんですけど、もしかしたら、これを機に肩が治るかもしれないという、かすかな望みを持ちました」

 メディアの中には「落合は秘密主義だ」と快く思わない者もいたようですが、川崎さんが明かしたように、このサプライズは計画的に進められていたのです。「川崎だけは絶対にない」と根拠もなく決め付けてしまった私たちの側にも責任はあったということです。先入観は危険ですね。

 このゲーム、川崎さんは打ちこまれて2回途中でマウンドを降りましたが、中日は逆転勝ちをおさめて川崎さんの黒星を消しました。しかし、勝ち負けよりも「落合は何をやってくるかわからない」とヨソの監督を疑心暗鬼にさせたことの方に、このサプライズの真の効果はあったと思います。

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