日銀の追加金融緩和策は円高傾向を変えられるか?
2月中旬の金融政策決定会合で、日銀は資産買入れ枠を10兆円増額することを決めた

 最近、為替市場の関係者から、「円高傾向に変化が現れるかもしれない」という話をよく聞く。実際に、為替市場でオペレーションをしている人たちは、円高傾向に少しずつ変化が出ているという感覚を持っているのだろう。それなりの説得力がある。

 円高傾向に一服感が出ている背景には三つの要素がある。一つは、わが国の貿易収支が赤字になったことだ。2011年のわが国の貿易収支は、マイナス1兆6089億円と48年ぶりに赤字に転落した。二つ目は日銀の追加緩和策の実施である。2月中旬の金融政策決定会合で、日銀は資産買入れ枠を10兆円増額することを決めた。これによって、通貨供給量が増えることに期待感が出た。

 もう一つは、米国経済に明るさが見え始めたことだ。失業率は8.3%に低下し、個人消費も底堅い動きになっている。円高傾向の終焉については、もう少し時間をかけて注視する必要はあるものの、一方的な円高の進展の可能性は低下したとみられる。

日銀の追加緩和策のサプライズ効果

 貿易収支の先行きについては、経済専門家の中でも様々な見方がある。ただ、家電製品などわが国の輸出製品の競争力が相対的に低下していることや、主要な輸入品である穀物やエネルギー資源の価格が世界的に底堅い動きを示していることを考えると、大幅な黒字基調に復帰することは容易ではないだろう。それは、長い目で見ると、円高傾向に歯止めを掛ける要素になるはずだ。

 日銀の追加緩和策の実施は、市場関係者にとってサプライズだった。米国のFRBがインフレターゲットを2%と明記したこともあり、日銀が何らか政策を発動する可能性はあった。しかし、資産買入れ枠を一挙に10兆円増額して65兆円に増やすと予想した人はあまりいなかったのではないだろうか。サプライズ効果は大きかった。

 特に、海外投資家の行動を見ていると、かなり為替市場の雰囲気が変わったことが分る。追加金融緩和策の発表のあった14日のロンドン市場では、いつもあまり動きのない投資家まで円売りに出ていた。この背景には、日銀の追加策によって通貨供給量が増大するとの期待が醸成されたことがある。

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