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まだ間に合うM8M9大地震に備えよ
やってる家族はここまでやってる

「わかっちゃいるけど、やっていない」そんな調子で後回しにしがちな地震対策。だが、家族の命を守るために研究を重ね防災の専門家になってしまった主婦もいるのだ。あなたも負けてはいられない?

ガラスには飛散防止フィルムを

 近い将来、起きるとされる首都圏直下や東海・東南海・南海3連動などのM8M9大地震。自分と家族の命を守るために、何を備蓄し、どんな約束をしておけばいいのか。

「うちでは防災ベストというのを用意しています。ポケットがたくさんあって、カード型の携帯ラジオやペンライト、ゼリー飲料を入れることができるんです」

 3人の男の子の母親でもある、危機管理教育研究所所長の国崎信江氏の横浜にある自宅では、この手作りのベストがリビングの椅子の背もたれや玄関のコート掛けに掛けられている。

「3・11で大きな被害を受けた陸前高田で調査をしましたが、ここは防災意識の高い地域で6割の世帯が非常用持ち出し袋を用意していた。ところが、ほとんど誰もそれを持って逃げていない。どんな状況か見ようと、ちょっと外に出て、そのまま津波から逃げることになってしまった。ベストならどんなときにも気軽に袖を通して出られます」

 こう分析する国崎氏は'91年、結婚を機に仕事をやめ主婦となった。だが阪神淡路大震災の被害に衝撃を受け、子供の命を守るために独自の研究を重ね、現在では文部科学省の地震調査研究推進本部政策委員会委員などを歴任するまでになった人物なのだ。

「世間では地震対策というとすぐ避難の話になりますが、首都圏では避難所に避難者が入りきれるのかわからない。混雑して居場所のない避難所に子供や寝たきりの高齢者を抱えた家族は入りにくい。私は自宅の防災をしっかりして、『避難しなくていい家』を目指そうと呼びかけています」

 そこで必要になるのが、本当に自宅にとどまったほうがよいのか、避難所に移動したほうがよいのかの判断だ。何を根拠に決めればいいのか。最初に確認すべきなのは自宅の立地条件。ポイントは大きく分けて、地盤、火災、浸水の3つだ。

 液状化の有無も含めた建物の倒壊リスクと、火災での危険度については、東京都都市整備局がHPで公開している「地震に関する地域危険度」が参考になる。火災については環状7号線周辺や東京東部の下町などが特に危険度が高い。

 浸水のリスクは、東京都建設局の「洪水ハザードマップ」で把握できる。江東区などのゼロメートル地帯では、地震の揺れや液状化で堤防が決壊し浸水する恐れもあるため、自宅周辺の土地の高低差を知っておくことが特に重要だ。

 さらに土地の性質だけでなく、家の周囲にある他の建物にも注意が必要だ。

「阪神淡路大震災のとき、私は揺れの直後に妻の手を引いて家の外に出ました」

 と語るのは大阪市で消防署長などを歴任した防災アドバイザーの森田武氏だ。

「自宅には十分耐震性があったのですが、隣に149mのビルがあり、我が家のほうに倒れてくる恐れがあると感じていたのです」

 自宅の建物自体の安全性は自治体などが勧める耐震診断を受けて確認するのが一番だが、およその判断基準は建築年代。'81年以前の建築は耐震基準が大幅に緩かったため、倒壊などの危険もある。

 次にチェックするのが室内の安全性。特に必須なのが、ガラスの飛散防止と大型家具の固定だ。防災の専門家たちは自宅の家具に嵌め込まれたガラスや窓ガラスに飛散防止フィルムを貼っていると口を揃える。

 家具の転倒防止用には天井と家具の間に突っ張って固定するタイプの器具がよく販売されているが、これだけでは不十分と指摘するのは、まちづくり計画研究所の渡辺実所長だ。

「突っ張り型の転倒防止器具は、直下型の大地震だと下から突き上げられて天井を突き破ったり、高さ調節用のネジが折れてはずれたりします」

 完全に固定するには壁にネジ釘などで止めるのが最も確実。だが渡辺氏は「下手に止めても、揺れで壁ごとはがれて倒れてくることもある」と指摘する。東京大学地震研究所の古村孝志教授は3・11後に、工務店に頼んで自宅の書架などを壁に固定してもらったと話す。

「忙しいのに『自分がやらねば父親の沽券に関わる』などと言って後回しにせず、プロに頼むのが一番です」

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